第4章…side ブルー1
相変わらずの日々が続いていた…
町から町へ旅をする変わり映えのいない毎日だ。
エスポワール一座の評判はいつしか海を渡り、隣の大陸の者までもが知る所となった。
私達はある貴族に招かれ、何日もの間船に揺られて隣の大陸へ渡った。
「おぉ〜〜…
遠い所をよく来て下さった!」
アルフレッドという貴族は、音楽や芸術へのが造詣が深く、才能のある若い芸術家をみつけだしてはその育成に努める…いわゆるパトロンというやつだ。
自分自身も絵を描くのが趣味だという男だった。
アルフレッドの友人がたまたまどこかでエスポワール一座の噂を耳にし、それをアルフレッドに紹介したことで、アルフレッドとしてはぜひとも自分の目で見たくなったのだという。
「明日の舞台、楽しみにしておりますぞ。
今夜はごゆっくりお寛ぎ下さい。」
その晩は、アルフレッドの屋敷でパーティが催された。
アルフレッドの友人や知人…町の有力者を招いての華美で退屈なパーティだ。
こんなことよりも、休ませてくれた方がどれだけありがたいか…
こちらは長い船旅で疲れているというのに…
しかも、明日の夜には、早速、舞台がある。
私の周りには入れ換わり立ち代わり、着飾った女達がすり寄って来ていた。
年のことや経歴、結婚してるのか等、よくもそれだけ思いつくものだと思われる程の質問を浴びせられ、答えるだけで喉が枯れた。
質問責めとつまらないおしゃべりの相手からは、真夜中になるまで解放されなかった。
とにかく、座長から、アルフレッドが一座にとって大切な人物であること、だから、愛想良く気に入られるように振舞えということはしつこい程に言い聞かされていたから、あまり冷たくも出来なかったのだ。
アルフレッドという男は、おそらく相当な額を座長に支払ったのだろう…
その晩は、宿ではなくアルフレッドの屋敷に泊めてもらうことになった。
*
「ブルーさん、あんたはどこに行っても本当によくモテるな。
うらやましいぜ。
でも、程々にしとかないと後が大変だぜ。」
クリスが思わせぶりにそう呟いた。
「後が大変……?
それはどういう意味だ。」
「レティシアさんが機嫌悪かったの…気付いてなかったのか?」
「レティシアが?…なぜだ?」
「あんた、本当に鈍いんだから…
まさか、レティシアさんの気持ちに気付いてないんじゃ…」
「レティシアの気持ち…?」
「わちゃ〜…
こりゃあ、駄目だ…」
クリスは、大袈裟に頭を抱える仕草をして見せた。
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