優しいお姫様2






その頃、カパエルは深い山の中をあてもなくとぼとぼと歩いていた。



(あれから何日経ったのかなぁ…
お皿もだいぶ渇いてきたみたいだ…
何も食べてないから、目もかすんできたよ…
僕、きっともうすぐ死ぬんだね…)



木の根っこにもたれ、休んでいると、だんだんと意識も遠のいていくように思えた。



「まぁ、大変!
こんな所に行き倒れの野良カッパが…!」



(誰…?誰かいるの…?)



「カッパさん、しっかりして…!」

カパエルのお皿に新鮮な水が染み込んでいく…



(あぁ…なんだか、優しい水だ…)

カパエルがゆっくりと目を開けると、そこにはとても美しい女性の顔があった。



「もしかして、あなたは…天使様…?」

「カッパさん、気が付いたのね!?私はアンジェリーヌよ。」

「僕を助けてくれたの?
僕のことなんて、助けてくれなくて良かったのに…!!」

そんなカパエルの言葉に、アンジェリーヌは、何も言わずそっとカパエルの手を握った。


「カッパさん、さぁ、帰りましょう!
早く帰らないと日が暮れるわ。」

「え?」

アンジェリーヌは、カパエルの手をひいて山道をどんどん歩いて行く。
麓には1台の馬車が待たせてあった。
アンジェリーヌに促されるままにカパエルは馬車に乗りこむ。

しばらくして馬車が停まった先…そこは、大きな白いお城だった。



「ここは…ノルディーナのお城?」

「いいえ、ここはフィンラのお城よ。」

「え?!…じゃ、アンジェリーヌはお姫様なの?」

「そうよ。でも、そんなんことどうでも良いことよ。
さぁ、まいりましょう!」

「うわぁ…」



フィンラの城は、城の造形こそノルディーナの城に似てはいたが、ノルディーナ城より遥かに大きく豪華だ。



「さ、そろそろ、夕飯の支度が出来てるはずよ!」

アンジェリーヌは広い食堂へカパエルを案内する。



「おかえり、アンジェリーヌ…おや、またなにか拾って来たのかい?」

「お父様、このカッパさんは人間の言葉がわかるんですよ。
拾ってきたなんて失礼ですわ。
このカッパさんは私の大切なお友達なんです。」

(…大切なお友達…)

「そうか、それはすまなかったな。
さ、カッパさん、早くお座りなさい。」

「あ、あの…僕…」

「どうしたの?カッパさん…?」

「ぼ…僕……」

アンジェリーヌとその父親である国王の優しい言葉に、カパエルの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。


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