優しいお姫様2
*
その頃、カパエルは深い山の中をあてもなくとぼとぼと歩いていた。
(あれから何日経ったのかなぁ…
お皿もだいぶ渇いてきたみたいだ…
何も食べてないから、目もかすんできたよ…
僕、きっともうすぐ死ぬんだね…)
木の根っこにもたれ、休んでいると、だんだんと意識も遠のいていくように思えた。
「まぁ、大変!
こんな所に行き倒れの野良カッパが…!」
(誰…?誰かいるの…?)
「カッパさん、しっかりして…!」
カパエルのお皿に新鮮な水が染み込んでいく…
(あぁ…なんだか、優しい水だ…)
カパエルがゆっくりと目を開けると、そこにはとても美しい女性の顔があった。
「もしかして、あなたは…天使様…?」
「カッパさん、気が付いたのね!?私はアンジェリーヌよ。」
「僕を助けてくれたの?
僕のことなんて、助けてくれなくて良かったのに…!!」
そんなカパエルの言葉に、アンジェリーヌは、何も言わずそっとカパエルの手を握った。
「カッパさん、さぁ、帰りましょう!
早く帰らないと日が暮れるわ。」
「え?」
アンジェリーヌは、カパエルの手をひいて山道をどんどん歩いて行く。
麓には1台の馬車が待たせてあった。
アンジェリーヌに促されるままにカパエルは馬車に乗りこむ。
しばらくして馬車が停まった先…そこは、大きな白いお城だった。
「ここは…ノルディーナのお城?」
「いいえ、ここはフィンラのお城よ。」
「え?!…じゃ、アンジェリーヌはお姫様なの?」
「そうよ。でも、そんなんことどうでも良いことよ。
さぁ、まいりましょう!」
「うわぁ…」
フィンラの城は、城の造形こそノルディーナの城に似てはいたが、ノルディーナ城より遥かに大きく豪華だ。
「さ、そろそろ、夕飯の支度が出来てるはずよ!」
アンジェリーヌは広い食堂へカパエルを案内する。
「おかえり、アンジェリーヌ…おや、またなにか拾って来たのかい?」
「お父様、このカッパさんは人間の言葉がわかるんですよ。
拾ってきたなんて失礼ですわ。
このカッパさんは私の大切なお友達なんです。」
(…大切なお友達…)
「そうか、それはすまなかったな。
さ、カッパさん、早くお座りなさい。」
「あ、あの…僕…」
「どうしたの?カッパさん…?」
「ぼ…僕……」
アンジェリーヌとその父親である国王の優しい言葉に、カパエルの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
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