現実3
「カパエル…辛いじゃろうが諦めるのじゃ…
カパ子以外にもおなごはいっぱいおるからな。」
「え……??」
カパエルには、まだ状況が理解出来ていなかった…
「良いか、カパエル、よ〜く落ちついて聞くのじゃぞ。
おまえが湖底に入った頃、仕事でよその村に行っていた村長が帰ってきたんじゃ。
村長は、ほれ、あの通り、若くてすっごい男前じゃ。
しかも、村一番の資産家で学歴もある。
甲羅の形もかっこいいし、おしゃれのセンスも抜群じゃ!
カパ子は村長に一目惚れしたそうじゃ。
村長もカパ子のことが気に入ったのか、ただのつまみぐいのつもりだったのかはわからんが、それからすぐにカパ子に子供が出来てしもうてのう…
で、知り合って3ヶ月後に結婚されたんじゃ。
スピード婚ってやつじゃな。
あともうしばらくしたら、子供も生まれる…
……だから、もう、諦めるんじゃ…」
「え…?え…?え…?
か、カパ子ちゃんが村長さんに一目惚れして…
結婚して、赤ちゃんが…
あ、赤ちゃん?!
え…?え…?ええーーっ?!赤ちゃん〜?!
ってことは、AがBがCが…」
ボンッ!
カパエルの頭の中は混乱と刺激でショートした。
「カパエル!
しっかりせぇっっ!!」
カパリックはカパエルを背負い、家に運んだ。
(気の毒にのう…
しかし、おぬしと村長ではあまりにも差がありすぎる…
諦めるのじゃ…
わしがおぬしにふさわしいおなごをみつけてやるからな。)
カパリックはカパエルの寝顔を見ながらそっと目頭の涙を拭った。
「カパエル!カパエルーーー!!」
次の朝、カパリックがカパエルの様子を見に行くと、部屋はもぬけの殻だった…
部屋の中には
「カパリックさん、お世話になりました。
このお金は恵まれないカッパ達に役立てて下さい。」
そう書かれた紙切れと多額のお金が置いてあるだけだった。
(あんまりだよ、カパ子ちゃん…
僕なんてもう生きてても仕方ない…カラカラに干からびて死んでやる…!!)
カパエルはカッパーポンの村を出て、死に場所を探しながら山の中をさ迷っていた…
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