「ゆかりさん、どうかしたの?」

ゆかりさんの目の前には地下に続く階段があった。
きっと、この先には、呪いでかっぱになった時に匿われてた地下室があるんだろう。



「ゆかりさん…そっちは……」

いやな記憶を思い出すだけだろうし、止めようと思ったんだけど、ゆかりさんは、地下への階段を降り始めていた。



「あ…」

そこは意外なことに、食品庫みたいな感じの場所で、片隅にはがらくたみたいなものも置かれていて、とても雑然としていて、部屋らしい所は見あたらなかった。



「ゆかりさん…」

ゆかりさんは躊躇うことなく奥の方へ歩いて行って、壁の一部をぐっと押し込んだ。
すると、その隣の壁がスーッと動き、さらにその下へ続く階段が現れた。



「さ、早く……」

驚く間もなく、ゆかりさんに促され、俺達はその階段を降りて行った。
きっと、長年、訪れる人がいなかったんだろう。
かび臭く、湿った空気がとても重苦しい雰囲気だ。



「あ、美戎…明るくなる術、使えるか?」

「使えるけど…懐中電灯持って来たから。」

美戎の明かりのお蔭で、地下室の様子が照らし出される。



「ここは全く変わってないな。」

そう言いながら、ゆかりさんは、壁にあるなにかをいじってた。
すると、あたりがぼんやりと明るくなった。



広さはそれなりにあるものの、窓のない部屋っていうのは、息が詰まりそうだ。
こんな所に隠れてたんじゃ、気分が滅入るのは間違いない。
いや、下手したら気が狂ってしまいそうだ。



ゆかりさんは、手前の部屋に向かって行き、美戎は、すたすたと勝手に奥の部屋に向かって行く。
どうしたもんかと迷いながら、俺はやっぱりゆかりさんの方へ歩いて行った。



「慎太郎…悪いんだけど、しばらくの間、一人にしてくれ。」

「え?……あ、あぁ、わかった。」

俺はすごすごとその場を立ち去り、美戎の入っていった奥の部屋に向かった。


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