カパエルだけがモテはやされることへの苛立つ気持ちを押さえようと、ミカエルはふと目についたカフェに立ち寄った。
隅っこの席で、スィーツを食べ、やっと落ち着いたかと思われたミカエルの耳に、さらに、彼を苛立たせる声が届いた。



「……ねぇねぇ、見た?
あのノルディーナ王国のオニガワラ王女……」

「見た〜〜!!もうすごすぎるわよね!
ミカエル様も、聞きしに勝るマニアよね!」

近くのテーブルの若い女性グループが、ミカエル達の話をしているのだ。



「マニアなんてもんじゃないわよ!
いくらなんでもあの趣味は信じられない!
カパエル様のお兄さまだけあって、そこそこかっこいいのにね…」

「ええーーーーっ!かっこいいですって?!
カパエル様と比べたら月とすっぽんよ!」

「そりゃあ、カパエル様とは比べ物にならないけど、一人でいたらそれなりじゃない……」

「まぁ、確かに言われてみれば、そうね…
ちっちゃいのと足が短いのをのぞいたら、まぁまぁイケてる方かもしれないわね。」

自分でも気にしている事実を指摘され、ミカエルのこめかみに青いものが浮き上がった。



「でも、多少イケてるにしろ何にしろ、あの人と結婚してる段階でもうおしまいじゃない?
そういえば、あの子供の顔見た?!」

「子供……ぷっ」

一人が噴き出したのをきっかけに、その場に笑いの発作が広がった。



「もう〜〜!!思い出しちゃったじゃないの!!」

「王女だけでもすごすぎなのに、ダブルなんて反則よね〜!!」

「なんでも、ノルディーナ王国じゃあの親子の画像にはモザイクかけてるらしいわよ!」

「ええーーーっ!本当なの?
だったら、こっちでもそうしてくれないと、あの親子の顔を思い出したらおなかの皮がよじれっちゃう〜〜!!」

女性グループは涙を流して笑い転げる。



(ち、畜生…!あの女達め…!
今すぐここで全員ヒキガエルにでも変えてやろうか!)


しかし、そんなことで魔法を使っては大変なことになる。
これ以上、悪い評判を立てるわけにはいかない。仮にも自分はノルディーナ王国の王子なのだ。
そう思い、ミカエルは必死になって心を沈めた。



(これもすべては、カパエルのせいなんだ…!!
あいつのせいでこんなことに…!!
許せねぇ!!ぜーーーーーっったいに許しちゃおけねぇ!!)

ミカエルの心の中に逆恨みの赤い炎がめらめらと燃えあがった。


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