さらに、棚の上にはDVDがずらりと並んでいることにミカエルは気が付いた。

タイトルは「カッパプリンス」

『国中が泣いた……
驚異の視聴率98.7%を記録したあの大ヒットドラマがついにDVD化…!
プレミアムボックスには、シリアルナンバー付きのカッパのカパエルフィギュアを同梱!』

という看板が掲げられており、その下には「プレミアムボックスの予約販売は終了しました」と赤い文字で記されてあった。



(……この国の国民は馬鹿ばっかりなのか?
カパエルのことがドラマになってるなんて…ありえねぇ…!!
っていうか、なんでそんなあほ臭いドラマがこんな視聴率なんだよ!)



「あ…!あれ、もしかしたら…!」



女子高生らしき少女達のグループが、ミカエルの方を見て何事かを囁いき、やがてゆっくりとミカエルの傍に歩み寄る。



「あ…あの……もしかしてノルディーナ王国のミカエル様ですか?!」

「そうだけど、なにか?」

きゃあーーー!という歓声と共にミカエルは取り囲まれ、差し出されるのは色紙を持つたくさんの手……



(ふふふ…そうさ……
これで良いんだ。
これこそがまともな反応だ。
やっぱり女子高生達はかっこいいものには敏感だな……)



「あ…あ…あの……
私達…サ…サインを……」

「あぁ…サインね。
本当は事務所を通さないとダメなんだけど…今日は特別だよ!」

そう言いながらミカエルがとびっきりの笑顔で色紙にサインをしようとした時……

「何をするんです!!」

「は?!何って……サインを……」

「ここにカパエル様のサインをもらってきてほしいんです!
あなた、お兄様なんでしょう?
頼んでもらえますよね!?」

「ば、ば、ばっきゃろーーーー!」



ミカエルは色紙を投げつけて本屋を飛び出した。



なんだ、この国は……



(く、く、くっそー!
なんで、カパエルばっかりこんなに……
俺は「マニアック王子」なんて呼ばれて、誰からも相手にされてないっていうのに……
っていうか、この国の奴らはカパエルがあほだってことに気がついてないのか?!)



そう考えるとミカエルは怒りの感情が燃え盛って来るのを感じた。




(……そうだ…!
カパエルなんて、また悪い魔法使いに酷い目にあえば良いんだ。
ふふ…ふふふふふ……)

ミカエルの口許に黒い微笑みが浮かび上がる……





つづく……かもしれない。

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