「私の妹のリーズです。」

「……は、はじめまして。レヴ様…リーズと申します。」

「ちゃんと顔をあげてご挨拶しなきゃ駄目だろ。
リーズは、人一倍はにかみ屋なので…申し訳ありません。」

「はじめまして。リーズさん。」

レヴがリーズの名前を口にした時、リーズは、反射的に顔をあげた。

リーズは、声や態度で想像されるより若くはなかった。
レヴは、もっと幼い顔を想像していたのだが、その顔はれっきとした成熟した女性の顔だった。
それもとても美しい…



(……レヴ様……
なんて、お優しい瞳をなさっているのかしら…)



「レヴ、リーズさんと一曲踊ってきてはどうだ?」

「そ、そんな、私はダンスはうまくありませんし…」

「大丈夫ですよ。
レヴはリードがうまいですから、安心して下さい。」

その時、ワルツの演奏が始まった。



「では、踊りましょうか…?」

女性達の羨望の眼差しが、一斉にリーズに向けられる。
リーズはダンスには自信がないといっていたが、まるでそんなことはなかった。
それがますます女性達には疎ましく感じられた。

曲が終わると、リーズは何も言わず、逃げるようにその場を去っていった。
その後もレヴは女性達から次々にダンスを申し込まれ、何曲か踊った後にやっと疲れたという理由で休ませてもらえることになった。
疲れたというのは口実ではなく、事実だ。
女性達はひっきりなしに、レヴにダンスの相手を申し込んだのだから。
レヴはそっと庭に抜け出した。
ひんやりとした気持ち良いの良い夜風が、レヴの頬を優しくなでる…
風に乗って、どこからか、独特の花の香りが漂ってくる。



(良い香りだ。
この香りは…百合だな…)

香りに導かれていくと、レヴの予想通り、そこには大輪の白百合が咲いていた。



「あ…あなたは…」

「まぁ、レヴ様!!
…先程は大変失礼しました。」

「いえ……」

「私…なんだか急に恥ずかしくなってしまって…」

「…構いませんよ。お気になさらずに…」

「本当に申し訳ありませんでした!」

「…いえ…」

あたりには気まずい空気が流れた。


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