22
その日はどことなく落ち着かない朝食となった。
レヴは先程見た写真のことを早く話したいと思っているし、他の者達は早く話を聞きたいと思っていたから。
スプーンを落としたり、コーヒーをこぼしたり、上の空でとんちんかんな答えを返したり…
一泊だけではあまりに愛想がないし、かといって何日も泊まるにはピエールの家は狭すぎる。
とりあえず、もう一泊してからレヴの屋敷に向かおうということに話は決まった。
(……えっ!わしが?)
(そんな長い時間でなくて良いんだよ。)
(わしも早く聞きたいのに…)
(頼むよ、ピエール!)
(……仕方ないのう…)
サリーとピエールのひそひそ話がまとまった。
「ジネットさん、これからこのあたりを少し散歩しませんかな?
あんた、このあたりは初めてなんじゃろ?
まぁ、そんなに珍しいもの等ありゃせんのじゃが…」
「ええ…初めてです。
確か、ヴェールさんも初めてですよね?」
「え…?……ええ
初めてですよ。」
「じゃ、ヴェールさんも一緒にでかけましょうよ。」
「…あ…でも、私は…」
「何か、ご用でも…?」
「……いえ。別に…
そうですね!では、ご一緒しましょう!」
なりゆきでヴェールも一緒にでかけることになってしまった。
「あ〜あ、ヴェールったら、本当に嘘が下手なんだから。」
「まぁ、良いではないか。
また、夜にでも話す機会はあるだろうからな。」
「そうだね!
で、どうだったんだい?
私の予想は当たってたのかい?」
「……それがだな…
写っていたのは、森の民ではなく、ごく普通の男性だったのだ…」
「えっ!そうなの?」
「私も君の話を聞いててっきり森の民が写ってるもんだと思っていたのだが…」
「そうか〜…
それは予想外だったね…
あ!でもさ、もしかしたらヴェールみたいに髪を染めてるんじゃ…」
「それはわからん。
もし、そうだとしても、ヴェールも今ではまるで普通の人間と変わりなく見えるではないか。
そんな風にしているのならわかるわけはない。」
「でもさ、よく見たら肌の色がなんとなく不自然だとか…なにかあるだろ?」
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