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「ところで、ヴェール…なぜ、ここへ立ち寄ったのだ?」

「…あぁ…そのことですか。
私も少し考えたのですが、皆さんを野宿させるのも気の毒だと思っただけのことなんですよ。」

レヴの心配をよそに、ヴェールの答えは意外な程、淡々としたものだった。



「…君は…君は、大丈夫だったのか…?」

「…えぇ…
実は、ここへ来たら辛い思い出がよみがえって来るのではないかと思ったのですが…
自分でも不思議なことに、ここでの楽しかった時の記憶の方が思い出されてきたのです。
そう…ここでの記憶は辛い事ばかりではなかった…
楽しかった事や嬉しかったこともたくさんあったのだとあらためて気付くことが出来たのです…」

「……そうか…
それなら良かった…
そう気付くことが出来たのは、今、君が幸せだからなのかもしれないな…」

「そうかもしれません…
今の私には様々な希望がありますから…
心が闇に閉ざされている時には、すぐそこにある暖かいものにも気が付かなかったりするものなのかもしれませんね…」

「…そうだな…
あるいは、自ら、見ないようにしていたのかもしれない…」

ヴェールは、もうあの頃の彼とは違う。
彼はあの時よりずっと強くなったのだ。



「レヴさん……あのまま暗い闇の住人で居続けていたら、私は今頃どうなっていたのでしょう…?」

「そんなことは考える必要はないではないか。
現に君はもうそうではないのだから。」

「……そうですね。もう私はそんなことを考えなくても良いんですね。
つまらないことを言ってしまいました。
あ…レヴさん、一つお願いしたいことがあるのですが…」

「なんだ?」

「……実は……」


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