12


「魔石がこんなすぐ傍にあったなんてな…
西の塔の魔女やシャルロさんが見た『赤と緑』は、森の民の緑のジネットさんとルビーのことだったんだ…」

「……やはり、私がジネットさんを殺したんです…」

「なんでだよ。
ヴェールは知らなかったんだし、仕方がないじゃないか。」

「子供が出来なければ…
ジネットさんは一人っきりになる機会もなく、そうすれば、きっとそのルビーを身に付けることもなかったのに…」

「ヴェール、そういうことを言うのはやめるんだ。
あの時、もしも、こうしていれば…そんな想いは大切な者を失った人のほとんどが感じることだが、そんなことを考えた所で時は戻らんのだ。
それに、リーズが事故にあった時、君は言ったではないか。
私が屋敷に帰らなかったとしても、リーズとの出会いが運命の出会いだとしたら、やはりきっとどこかで出会っていただろうと…
ジネットさんに子供が出来ていなかったとしても、彼女はきっといつかあの指輪を身につけていただろう…
酷なようだが…ルビーを買ったのは彼女自身なのだ。
たまたまピエールさんが席をはずしたほんの短い時間に彼女はルビーと出会い、それを手に入れてしまった…
…人間の力ではどうしようもならない大きな力が働いてしまったとしか思えないではないか。
考えてみれば、魔石は今まで私達が探さずとも、向こうから私達の周りに近付いて来ていた。
リーズのムーンストーンもそうだ。
今回も探し回るのではなく、私達の元に近付いて来る石に注意すべきだったのだ。」

「そうだよ、ヴェール。
あんただって本当はそのことがよくわかってるんだろ。
自分を責めるより、これからはジネットが命がけで遺してくれた子供をしっかり守っていかなきゃ。」

「なんと!
ヴェールさん、あんた子供が産まれたのか!」

ピエールは、ヴェールをみつめ目を丸くした。



「そうなんだよ。
それが、ジネットによく似た男の子でさ。
赤ん坊って本当に可愛いもんだね。
あたし、今まで赤ん坊なんてうるさいだけだと思って大嫌いだったんだけど、あの子を見てたらあたしも子供がほしくなっちゃったよ。」

「そうか、そうか…
ヴェールさん、辛いだろうがジネットさんはその子の中に生きてるんじゃよ…
その子の中には、ジネットさんの血や魂が流れてるんじゃ。
そう思って、その子を一生懸命育てることじゃな。」

「…はい…そうします…」

そうつぶやいたヴェールの瞳は虚ろだった…



「それで、今回はどうしてここに?」

「西の塔の魔女が言ったんだよ。
魔石のことが解決した時、リーズが目を覚ますだろうって。」

「そうだったのか。
リーズさんが元気になってると良いのぅ…」



- 192 -
しおりを挟む


[*前] | [次#]
ページ:



戻る







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -