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頂上までは思ったよりも遠く、険しい道程だった。
しかも、登っていくにつれ熱気が増す。
「ジャックは…よくこんな道を登ったもんだね…」
汗にまみれ息を切らしながらサリーがそう言った。
「ここへエメラルドを捨てれば助かる…
ジャックさんはそれだけを信じて、助かりたい一心で必死だったのだろう…」
「……もう少し早く出会えていれば……!
残念です……」
「ヴェール…しかし、仕方のないことだ…
これが、ジャックさんの運命だったのだろう…」
頂上に着いたのは、あたりが薄暗くなった頃だった。
「あんたら、けっこう健脚だな。
こんなに短い時間でここまで来れる奴はめったにいないよ。」
「なんだ、そんなことならもっとゆっくり登ってくれれば良かったのに…
あたしだけ遅れちゃいけないと思って、かなり無理したんだよ!」
「そうかい。
そいつは悪かったな。」
「おかげで早く登れたのだから、まぁ良かったではないか。
帰りはゆっくりと降りよう…」
レヴがサリーをなだめている時、男がある場所を指差した。
「あの男が落ちたのは、あそこだ…」
男が指差す先に三人は歩を進め、柵の前に花を手向けて祈りを捧げた。
(ジャックさん…どうぞ、安らかに…)
噴煙をあげ赤々と煮えたぎる溶岩の熱気は蒸せかえるようだ。
ジャックもまさかこんな所で死んでしまうことになろうとは思ってもいなかっただろう…
またしても、魔石は、罪もない人の命を奪ったのだ。
「レヴさん!!」
「どうしたんだ?」
「見て下さい!あの燃える溶岩を…」
眼下に広がる溶岩をみつめているうちに、レヴは、ヴェールの言わんとすることを理解した。
「まさか…これが、『緑と赤』だというこなのとか…!?」
「緑と赤…?
あ、そうか!赤い溶岩と緑色のエメラルド!!
じゃ、西の搭の魔女やシャルロが見たイメージっていうのは…」
「……おそらく…」
「どうしたんだい?
なんか変わったものでもあったのか?」
「いえ…溶岩というものを初めて見たものでびっくりしてしまいまして…」
案内の男の質問を、レヴは曖昧に誤魔化した。
「そうか。
見慣れてない者にとっちゃ、確かにすごい光景だよな…」
ふもとに着いた時にはあたりは真っ暗闇になっていた。
三人は、その夜、麓の町の宿に泊まることにした。
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