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「あれは、今から半年程前のことだったかな。
あの男が、山の頂上まで連れていってほしいと言ってきたんだ。
頬はこけ、目は窪み、土みたいな顔色をして、苦しそうに息をして、具合いが悪いことは一目でわかったさ。
あの山は、元気な奴でさえ音をあげるような険しい山なんだ。
そんな身体で登れるわけはないと言ったんだが、男は異常な程真剣な目をして懇願するし案内料をはずんでくれたから、俺もつい引き受けちまったんだ。
途中で死んでしまうんじゃないかとも心配したんだが、男はどうにか登りきった。
よほど、あの山に登りたかったんだろうな…
そして、頂上に着くなり柵を乗り越えて火山の縁に行こうとするんで、『まさか死ぬつもりじゃないだろうな!』と声をかけたんだ。
すると『その逆だ!生きるために邪魔なものを捨てにきたんだ!』と言って、これでやっと助かったとかなんとか呟いて、それから、なんと!あの男は懐からナイフを取り出したんだ。
やっぱりあいつは死ぬつもりだったんだ!と思い、引き留めようとした時、奴はそのナイフを自分の手に振り降ろしたんだ!
それと同時に男は悲鳴をあげ血が流れ…俺は、その様子に呆気に取られて一瞬ぼっとしてしまった。
すると男はもう一度度、ナイフを高く掲げ……
その瞬間だった…
まるで、奴の身体を誰かが後ろから突き飛ばしたように奴の身体はバランスを崩して、絶叫と共に落ちていったんだ…
今でも俺は、奴が何をしようとしていたのかわからない…
それにあの不自然な落ち方が妙に気になってな…」

「そうだったんですか…
……ありがとうございました。
あの……もし、よろしければ、私達を火山口へ案内していただけないでしょうか? 」

「それは構わないが、またなんでだ?」

「せめて、ジャックさんに花を手向けたいと思いまして…」

レヴ達は野の花を摘み、火山口を目指した。



「レヴ…ジャックはなんで手を切ったんだと思う?」

「おそらく、私と同じだろう…
指輪がはずれなくなっていたのではあるまいか…」

「やっぱりそう思うかい。
じゃ、間違いなくその石は魔石だね…」

「……間に合いませんでしたね…」

三人は小さな声で囁き合った。



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