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「どこかの市で買ったと申しておりました。
しかも信じられないような安いお値段で…
それを聞いて、そんなに安いんじゃガラス玉じゃないの?と私が言った所、彼はすぐに宝石商へそのエメラルドを持ち込み、鑑定してもらったのです。
すると、それは本物のエメラルドで、しかも相当に価値のあるものだとわかったのです。
彼は有頂天でした。
そして、その指輪を私にくれるといったのですが、私は、ほら…この通り手が小さいのです。
私の指にはあのエメラルドは大きすぎて似合わない…
サイズから考えても以前の持ち主は男性のようでしたし、あなたがつければ?と言ったのです。
主人はふだんからあまりアクセサリーを身に付ける人ではありませんでしたが、指輪ははめてみるとサイズを直さなくても良い程にピッタリだったのです。」

「なるほど…それでご主人はエメラルドを身に付けることになられたんですね。」

「そうです。
彼は、友人達に会う度に、その指輪を手に入れた経緯を話し、自分の目利きがいかにたいしたものかということを自慢していました。
ところが、しばらくして主人は体調が良くないと言い始めました。
動けない程ではなかったので、風邪でもひいたのかと思ったのですが、しばらく経っても一向に良くなりません。
そして、ある日お友達と山にでかけた時、突然、どこかからか大きな岩が転がり落ちてきたのです。
私や友人達も一緒でしたが、まるでその岩は主人のことを最初から狙っていたかのように落ちてきたのです…」

「では、ご主人はあなたの目の前で…!?
……なんとお気の毒な…」

夫人は俯き、そっと涙を拭う。



「主人が亡くなってから、誰かが主人の死はあのエメラルドのせいではないかと言い出したのです。
私は元々その手の話はあまり信じてはいませんでしたが、言われてみれば思い当たることばかりです。
主人に異変が起き始めたのは、あのエメラルドを手に入れてからですし、それでなければそんなに安い値段で買えるわけがありません。」

「それで、ご主人のエメラルドは?」

「捨てようと思ったんですが、主人の友人のジャックという人が、そんな馬鹿馬鹿しい話は信じない!そんなものはただの迷信だ、主人が死んだのもただの事故だと言って、主人の形見にそのエメラルドをほしいとおっしゃるので差しあげたのです。」

三人は、その言葉に息を飲んだ。



「ジャックさんは、今、どちらにいらっしゃるんですか?」

「それが……」

「まさか、ジャックさんもお亡くなりに…!?」

「いえ、そうではないのですが……ジャックさんはエメラルドを持って帰られてしばらくしてから行方不明なのです。」

「行方不明…?
ジャックさんにご家族はいらっしゃるのですか?」

「ええ、奥さまが…」


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