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「おめでとうございます。」

「えっ?では、やはり…」

「ええ、あと半年もすれば可愛い赤ちゃんが産まれますよ。」

医師の言葉に、ジネットは走り出したくなる気持ちを懸命に押さえ、家に戻った。



「カタリナ!どうだったの?」

「母さん!やっぱり思った通り…」

「そうだったの。おめでとう、カタリナ…」

「母さん……」

「いずれは、ヴェール様のあとを継いで森の長となる大切な赤ちゃんよ。
大事にしなくちゃいけないわね。」

「ええ…」

次の日からはデイサによる母親教育が始まった。
森の民の女性達は、予定日の三ヶ月前になると森の奥にある施設に行く。
「絆の家」と呼ばれる場所だ。
先祖の木々が生い茂る森のすぐそばにある絆の家で、穏やかな時をお腹の子供と二人きりで過ごす。
三ヶ月の間は何があろうと誰も会いに行ってはいけない。
もし会いに行けば、子供は死んでしまうと信じられているため、会いに行こうとする者もいない。
出産は母親がすべて一人で行い、無事に産まれたら狼煙をあげるのだ。
それが見えれば、夫や家族も会いに行くことが出来る。

ジネットは、いろいろなことを覚えるのに精一杯で、あっという間に一日が過ぎ去ってしまう。
気が付けば、ジネットが森へ帰って来てからもう三ヶ月が経っていた…



「おなかもずいぶん大きくなってきたわね。
もうそろそろあの場所へ行く頃ね…」

「母さん…私、心配だわ…
たった一人で三ヶ月も過ごして、出産も一人でやらなきゃならないなんて…」

「何を言ってるの?
私達はみんなそうやって子供を産んで来たのよ。
それに、あなたは一人じゃないわ。
赤ちゃんと一緒なんだから…」

「……そう…そうだったわね!」



(しっかりしなくっちゃ!
ヴェールさんが帰ってこられるまで私がこの子を守らなきゃいけないんだもの…!)



数日後、ジネットはディサに見送られて絆の家を目指した。



「じゃ、頑張ってね…!」

「ええ。
今度帰って来る時は、母さんももうおばあちゃんね!」

「まぁ…!!」

ジネットとディサは微笑み手を振りながら別れた。
この先に待つ明るい未来だけを信じて…


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