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*
「愛の町…久しぶりですね。
またあの町でなにか…?」
「いや、今回も通過点に過ぎないのですよ。
ただ、あの町は美しく気分の良い町ですから、素通りするにはもったいないではありませんか。
のんびりといきましょう。」
「そうですね。」
(良かった…シャルロさんのことはなんとか大丈夫だったみたいだわ。)
四人は軽い食事を採った後、愛の洞窟へ向かった。
「ジネット、あっちの方を見にいこうよ。」
「ええ」
「では、私達はそこのベンチで待ってることにしよう。」
「そうかい、ここにいるんなら、じゃ、荷物を見といておくれよ。」
サリーは自分のバッグをレヴに渡した。
「ジネットもレヴに預けときなよ。」
「いえ、私は大丈夫です。」
「あんたのバッグ、えらく重そうだね。
なにか特別大事なものでも入ってるのかい?」
「いえ、薬草やら…特にたいしたものではないのですが…」
「じゃ、預けときなって!」
「ジネットさん、どうぞ。
私達はここにいますから…」
そこまで言われてしまっては仕方なく、ジネットはレヴにバッグを渡した。
「じゃ、行こうよ!ジネット!」
「えぇ…」
サリーはジネットの手をひっぱり、森の方へ走って行った。
「今のうちだ。
ヴェール、早く、写真を…」
「……本当に良いのでしょうか…
バッグの中を勝手に見るなんて…」
「私もこんなことは気は進まないが…仕方がないではないか…」
「父の身内ならなんとなく面影でわかるかもしれませんが、父の友人だったら私が見てもわかりませんよ。」
「それはそうだが…
見てみないことにはわからないことのだから…」
「しかし……では、レヴさんが写真を出して下さい。」
「何?私がか……
………そうだ…では、二人で探そう…」
二人は罪悪感に苛まされながら恐る恐るジネットのバッグを開けたがどちらも手を出さない。
見ただけでは深いバッグのどこに写真があるのかわからなかった。
「レヴさん、見るだけでは…」
「じゃ、君も探せ。」
二人は押し付けあうようになかなかバッグの中に手を伸ばそうとはしなかったが、やっとヴェールが羊皮紙にはさまれた写真をみつけ手を伸ばした。
ヴェールは羊皮紙をゆっくりと開く…
「こ…これは…!!」
「ヴェール…知ってる人なのか?」
「これは…」
ヴェールが話しかけた時だった。
「レヴさん、ヴェールさん、何をなさってるんです!?」
ジネットの動揺した声が二人の背中に聞こえた…
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