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「出生の秘密などについても誰にも話してはいないのか?
君は、私には自分から教えてくれたが、そうやって他の人にも教えた覚えはないのか?」
「ええ…誰にも…
私が自分のことを話したのはレヴさんだけです。
…というより、案内をする時も会話らしい会話はしてませんから…」
「…そうか…ますますわからなくなってきたな…」
三人の推理は見えない壁にぶちあたり、気まずい沈黙が続いた。
「そうだ!!
レヴ、ジネットが持ってた写真を覚えてるかい?」
「あぁ…」
「もしかしてさ、あの男の人とヴェールが何か関係があって…
いや、そうじゃない!
ヴェールじゃなくてヴェールのお父さんかお母さんと知り合いで、その関係でジネットがヴェールを探してるんじゃないかい?
つまりさ、シャルロと同じようなもんさ。
お母さんというよりはきっとお父さんの知り合いとか親戚とか…」
「…なるほど!
それならありうる話だな。
たとえば、君のお父上のご兄弟がいらっしゃったとして、その方が亡くなられたか何かの事情で動くことが出来ず、その娘さんのジネットさんが代わりに君のことを探している…とか…」
「そうだよ!
きっと、そうに違いないよ!
レヴ、さすがだね!」
「そうですね!
父も肉親にはきっと事情を話していたでしょうから…そういうことならあるかもしれませんね!」
「だとしたら、ジネットはヴェールの従姉妹とかだったりしてね!」
「従姉妹……?」
「ご友人の娘さんだということもあるぞ。」
「……でも、もしそうだとしたら……
ジネットさんは私の出生の秘密を知っているということになりますね…」
二人には、ヴェールの顔に一瞬、暗い影がさしたように思えた。
「そういえば、君はジネットさんの持っていた写真を見ていなかったんだな。」
「ええ、ちょうど見る機会がなくて…」
「では、まずはそれを見て確認してもらおう。
そこから、何かわかることがあるかもしれない。」
「そうだね。まずはそこからだよね。
……それより明日からはどこへ行くんだい?」
「そうだな…どうしよう…?
今の所、魔石の手掛りもまるでないのだから、どこへ向かっても構わないのだが…」
「ここからはあの愛の町が近いよね?
あの場所はジネットも気に入ってたし、またあそこに行くってのはどうだい?」
「そうだな…
では、そうしようか?」
次の日、四人は愛の町を目指して出発した。
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