「彰…どうしているの?」

「どうしてって…久しぶりに休み取った。
ちょっと話したいことがあって…」

その時、ピンと来た。
彼は、きっと私と同じことを考えている。
私達は、けっこう気が合って、そういうことは今までにもあったから…
それならば…彼に話させてあげよう。
その方が、彼もすっきりするだろうから。



「話って…何?」

久しぶりの二人そろっての夕食なのに、気が重い。



「うん…あの…あと二か月だけ我慢して。」

唐突なその言葉は、どういう意味なのか、私にはわからなかった。



「どういうこと?」

私は率直に質問した。



「うん、だから…
あと二か月したら、今の居酒屋やめて、昼間の仕事に就くから…」

「え?」

「あと少しで借金のめどが立つんだ。
ちょっと無理しすぎたけど、そのおかげでなんとかなってきた。
長い間、寂しい想いをさせてごめん。」

その言葉を聞いたら、胸がいっぱいになってしまった。
彼は、気付いてたんだ。
彼は、考えていてくれたんだ。



「な、なによ、私…別に寂しくなんか…」

私の口から飛び出したのは、心とは裏腹な強がり。
彼はそれを察したのか、ふふっと笑った。



「……本当にごめんな。」

なんで、そんなに素直なのよ!
思わず、涙がぽろりとこぼれた。



葉は花のことを想っていてくれた。



私もこれからは、葉のことをもっと深く信じて愛そう…



そんなことを想った。



fin.


- 89 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

戻る 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -