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「彰…どうしているの?」
「どうしてって…久しぶりに休み取った。
ちょっと話したいことがあって…」
その時、ピンと来た。
彼は、きっと私と同じことを考えている。
私達は、けっこう気が合って、そういうことは今までにもあったから…
それならば…彼に話させてあげよう。
その方が、彼もすっきりするだろうから。
「話って…何?」
久しぶりの二人そろっての夕食なのに、気が重い。
「うん…あの…あと二か月だけ我慢して。」
唐突なその言葉は、どういう意味なのか、私にはわからなかった。
「どういうこと?」
私は率直に質問した。
「うん、だから…
あと二か月したら、今の居酒屋やめて、昼間の仕事に就くから…」
「え?」
「あと少しで借金のめどが立つんだ。
ちょっと無理しすぎたけど、そのおかげでなんとかなってきた。
長い間、寂しい想いをさせてごめん。」
その言葉を聞いたら、胸がいっぱいになってしまった。
彼は、気付いてたんだ。
彼は、考えていてくれたんだ。
「な、なによ、私…別に寂しくなんか…」
私の口から飛び出したのは、心とは裏腹な強がり。
彼はそれを察したのか、ふふっと笑った。
「……本当にごめんな。」
なんで、そんなに素直なのよ!
思わず、涙がぽろりとこぼれた。
葉は花のことを想っていてくれた。
私もこれからは、葉のことをもっと深く信じて愛そう…
そんなことを想った。
fin.
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