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「ずいぶんと遠いのね。」
「もう少しだよ。頑張って。」
四人は、人気のない山道を歩いていた。
「なぁ、ミツル…彼女達疲れてるみたいだけど、怒ってないかな?」
「大丈夫だって。蛍を見れば疲れなんて吹き飛ぶさ。」
二人はひそひそと会話を交わす。
「ねぇ、ミツル…」
「あと少し…本当にあと少しだから!」
ミツルはそう言って微笑み、アサミの背中をそっと押した。
「わぁ…!」
藪を抜け、小川の流れる場所に出たと思ったら、そこにはほのかに光る蛍が乱舞していた。
「杏子!」
「悦子!」
同時に声を発したアサミとマユミはお互いに顔を見合わせた。
「もしかして、あなた…」
「ってことはあなたも…」
二人のただならぬ様子に、マサルとミツルも異変を感じた。
「どうかしたのか?」
ミツルの問いかけに、アサミとマユミは、同じタイミングで頷いた。
「今まで隠しててごめんなさい。」
「隠してたって…何を…?」
「私…実はこの世の人間ではないの…」
「えっ!?」
ミツルの瞳が大きく見開かれた。
「私も…実は私達は、この世に未練を残した浮遊霊なの…」
「な、なんだって…!?
あ…だから、あの時…」
今度はミツルとマサルが顔を見合わせた。
二人の脳裏には、今までに体験した数々のおかしな出来事が思い起こされた。
「あなたには私達のことが、ごく普通に見えてたみたいだから…それで、つい言いそびれてたんだけど…って言うか、普通は見えないものなのよ。」
アサミはくすりと微笑みながら、さらっとそんなことを言う。
「ははは…そっか…
浮遊霊…」
「ミツル…どうする…!?」
二人は、光ながら空を舞う、アサミたちの知り合いの姿をぼんやりとみつめながら、これからどうしたものかと途方に暮れていた。
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