「マサル、こないだはありがとうな。
アサミちゃん、喜んでたよ。」

「そうか、それは良かった。」



ちりりーん



軒下の風鈴が涼やかな音を弾き出す。



「おまえもあと三年だよな?」

「あぁ、おまえと同じ年に来たからな。」

「マユミちゃんとのこと考えたら、辛くなるだろ?」

「まぁな…」

魔界から人間界への研修は、満十年。
二人は、もう七年の歳月を人間界で過ごしていた。



「最初はこんなとこに来るのすっごくいやだったんだけどなぁ…」

「俺もだ。
人間界で学ぶことなんてないと思ってたし、人間なんて自分勝手で酷い奴ばっかりだって思ってたからな。」

「住んでみると意外とそうでもなかったよな。」

「俺、時々、魔界に帰りたくない!…なんて思ってしまうんだ。
このまま、マユミちゃんと結婚して、ずっとこっちの世界で暮らしたい…なんてな。」

「それは難しいぞ。
僕達の正体がバレたら、マユミちゃん達の態度だって変わるだろうしな。」

「そうかな?やっぱり、本当のことを言ったら、もうおしまいだろうか?」

「そりゃあ、そうだろう…」

ミツルのその一言で、二人の間に気まずい沈黙が広がった。



「マサル…この休み、ダブルデートしないか?
ここにいられるのもあと三年なんだし、楽しい思い出いっぱい作ろうぜ!」

「そうだな!
じゃ、早速、今夜からどっか行こう!
今夜は幸い満月じゃないし。」

「よーし!
この四日間、最高の夏休みにしような!」

マサルとミツルは、スマホの画面をみつめ、ダブルデートの計画を練り始めた。
二人の楽しい想い出作りに、軒下の風鈴がまた可愛い音色を響かせた。

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