「ミツル…この前はありがとう。
マユミちゃん、楽しかったって…」

「お役に立てたのならなによりだ。」

「それで、なにかお礼を…」

「そのことなんだが、ちょうどおまえに頼みたいことがあったんだ。」

「頼みたいこと…?」

マサルは怪訝な顔をミツルに向けた。



「実はな、マイスイートハニーのアサミちゃんが、向日葵を見に行きたいって言い出したんだ。」

「今は向日葵の季節だからな。
行けば良いじゃないか。」

「マサル…忘れたのか?
僕は、太陽の光が苦手なんだぞ。
特に太陽の光が強い夏は夜しか活動出来ない。」

「あ、そうだったな…」

「だから、僕の代わりにアサミちゃんと向日葵畑に行って来てほしいんだ。」

「そういうことか…よしわかった!」







「わぁ…すっごーーい!」

アサミは目の前に広がる広大な向日葵畑に、目を輝かせた。



「本当に見事な風景ですね。」

「あ〜あ、ミツル君にもこの風景、見せてあげたかったなぁ。」

アサミは、残念そうな声でぽつりとそう言った。



「あいつ、紫外線アレルギーだから…」

「だから、いつも夜にしか会わなかったのね。」

「ええ…でも、なかなかあなたには言い出せなかったみたいですよ。」

「ミツル君ったら、水臭い…」

「あいつ、あなたにぞっこんですから。」

「……そうなの?」

アサミは、肩をすくめ、嬉しそうに微笑んだ。



「ええ、もちろんですよ。
だから、俺に代役をさせてまで、あなたの望みを叶えようとしたんですよ。」

「ミツル君ったら…」

アサミの機嫌良さそうな顔に、マサルもようやく安堵した。



(ミツル…これで、借りは返したからな。)



背の高い向日葵で作られた迷路をゆっくりと歩きながら、マサルは
心の中でそっと呟いた。







(マサルの奴、うまくやってるかなぁ?)

ひんやりとした地下の棺桶の中に横たわりながら、ミツルは、二人に想いを馳せた。

心地良いまどろみの中で、ミツルは明るい日差しの中に踊る鮮やかな向日葵の群生を見ていた。

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