「あ づ い……」



俺の声よりもでかい蝉時雨が、暑さを倍増してくれる。
扇風機の風力を「強」にして、その前に水を張ったたらいを置いている。
なんでもこうすると、ただの風よりも涼しい風になるらしい。
しかし、体温をも超えるこの暑さでは、こんな工夫も頼りにはならない。



「あー…あづ……」

俺はごろりと寝転んだ。



こんな暑い日は寝るのが一番だ。
長い髪は一つに束ねて、ポニーテール状態に…
なんだかよくわからないいいかげんな英語の書かれたださいTシャツ、オレンジ色の短パン…



なんてひどい恰好なんだ。
我ながらいやになる。
だけど、これらはフリマで各100円で売ってたもの。
さすがに100円のものに文句は言えない。



外ではパリッとキメてる俺も、家に帰ればこんなもんだ。
なんせ俺はビンボーロッカー。
こんな長い金髪ではなかなか正社員にはなれない。
だけど、長い髪はバンドマンの命だ。
絶対に切ることは出来ない。
それに、ライブの日には会社を休みないといけないから、バイトしか出来ない。
当然、バイトだけでは、たいした稼ぎにはならないが、俺にはメジャーデビューっていうでっかい夢があるんだ。
どんなことだって、耐えてみせるぜ!



でも……来年には絶対エアコンを買ってやる!



〜fin.

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