「それは三郎さんだ!
由香、三郎さんに会ったんだな!」

「さ、三郎さんって……?」



家に戻った私は、さっきのことをおじいちゃんに話して…そして、思いがけないことを聞かされた。
なんでも、このあたりには三郎さんという人の目撃例があり、三郎さんはずっとあの丘でボタンを探しているのだとか…



「わしらがまだ子供の頃にも、そして、学生の頃にも、三郎さんに会ったという者がおった。」

「ま、待ってよ、おじいちゃん。
そんな昔の人がなぜさっきあそこにいるのよ。」

「なぜって…由香…三郎さんは幽霊だからな。」

「え……ええーーーーーっっ!」

私の大声に、おじいちゃんは顔をしかめた。



「このあたりに、どういう想いがあったのかはわからんが、三郎さんはあの丘で…しかも、今頃の時期に出て来ることが多いんだ。」

「ゆ、幽霊って…
だ、だって、さっきの人、身体が透けたりしてなかったし、足もあったし、ちゃんとしゃべったし……」

「そうか、そんなにごく普通の格好で出て来るんだな。」

「あの人が幽霊だなんてそんなこと……あ……」

私は今になって思い出した。
おじいちゃんが私を探しに来て、ほんの一瞬目を離した隙に、おじいちゃんの姿がその場から掻き消えていたことを…
あのあたりに隠れられる場所なんてないし、確かにそれはとても不思議なことで…


あらためてそのことを考えると、さすがに背筋が冷たくなった。



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