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「ティム、は、は、早く、願い事を…!!」
もう時間がギリギリだったはずだということを思いだし、俺は、ティムを急かした。
「え…え…え…ど、ど、どうしよう!?」
「なんだ、おまえ、願い事を決めてなかったのか?!」
かぼちゃの輝きが徐々に弱くなってることに俺は気が付いた。
「急げ!ティム!」
「あ…あぁ…
えっと…おばあちゃんの…あ、でも、ママが…あ、それに裏のスミスさんが…」
ティムは叶えたい願いをたくさん思い出してしまったのか、とりとめのないことをぶつぶつと呟くばかりだった。
「ティム!かぼちゃの光が消えるぞ!
早く、何か言うんだ!!」
「…え……
ど、ど…どうか、世界中の人にちょっと幸せなことが起こりますように!!」
ティムがそう言い終わるのと同時に、かぼちゃの輝きは消えた。
「……なんだ、今の願いは?」
「だ、だって、急だったから…
それに考えたら願い事はいっぱいあって…一つに決められなかったんだもん。」
「それはともかく、『ちょっとずつ』ってのは何なんだ?」
「だ…だって…
幸せをたくさんの人で分けたら、きっと少しずつになると思って…」
そう話すティムの声が震え、瞳からは大粒の涙がこぼれた。
「…そうか…
ティム!すごいぞ!もうおまえの願いが叶ったぞ!
……兄ちゃん、もう幸せなことがあった。」
「え…?何のこと…?」
「こんな可愛い弟がいてくれて…俺…すごく幸せだ…」
いつもなら恥ずかしくて言えないような言葉が不思議な程、すらっと口を吐いて出た。
「兄ちゃん…
……僕もこんな優しい兄ちゃんがいてくれて幸せだ…!!」
ティムはそう言って俺の胸に飛びついてきた。
「来年もまたその次も…
大人になってもまた一緒に探そうね!
今度は兄ちゃんのほしいものをお願いしてあげるよ!」
「俺は良いよ。
それより、おまえの背が伸びるように願ったらどうなんだ?」
「そんなのお願いしなくても、そのうち伸びるよ!!」
満月の優しい月明かりに照らされた道を、俺達は手を繋いでゆっくりと歩いていく…
(仕方ないな。来年もつきあってやるとするか…)
弟のまだ小さな手が今の俺より大きくなっても、俺は今夜のことを忘れない。
今年のハロウィンに、あなたの元にはどんな幸せの魔法が届くのでしょう?
その幸せは、誰かが黄金のかぼちゃに願ってくれたおかげなのかもしれません…
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