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そっとのぞいてみると、兄さんは隣の部屋でパソコンを開いてなにやら真剣な顔で画面を見てた。



(シュウ…兄さん、何時頃来たの?)

私は小声でシュウに今日の様子を質問した。



(本当に、びっくりしたよ…
いきなり入って来ておまえは誰だ!
なんで、こんな所にいる?なんで、俺の服を着てる?って胸倉掴まれて……
でも、その言葉で俺はその男がひかりの兄さんだってわかったんだ。
わからなかったら、きっとぶっとばしてたと思う……)

(そうだったの…)

すっかり忘れてたけど、シュウが着てるのは、実家から持って来た兄さんの服だった。
それを見て、兄さんもびっくりしただろうな…



(あ、それでどうしたの?)

(とりあえず、簡単な自己紹介をして……
俺はひかりの彼氏でここで一緒に暮らしてるって言った。)

(そ…そんなこと言ったの?)

(だって、本当のことじゃないか…)



それはそうだけど…やっぱりそんなこと聞くと、なんだか動揺してしまう…
職場の人で私達のことを見た人がいて、その人にも冷やかされたけど、兄さんだって言ったらあっさり信じてもらえた。
その様子を見て、やっぱり、私とシュウは恋人同士には見えないんだなぁって、軽くショックを受けたんですけど……



(そ…それで、それからどうしたの?)

(おまえはどこにいるんだとか、俺の素性とかいろいろ聞かれたよ。
でも、俺のことはどう言っていいかわからないから、おまえはバイトに行ってるってことを伝えて、俺のことはひかりが帰って来てから話すってことにして…それで、その時にメールを打ったんだ。)

(そうだったの…
じゃ、兄さんが来てからそんなに時間は経ってないんだ。)

(そんなに軽く言うなよ。
和彦さんと二人っきりの時間がどれだけきついもんだったか、おまえにはわからないだろうな…)

(わ、わかってるよ。
私だって、兄さんが来てるなんてわかったら帰って来たくなかったもん。)

(よく言うよ…
それにしても、和彦さん、何を見てるんだろうな?
ほっといて良いのか?)

(ほっとかれてるのは、こっちの方だよ…)



それからしばらくして、兄さんは不意に立ち上がり、パソコンを抱えてまた私達の所へ戻って来た。

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