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「本当にあいつとはなにもないのか?」

「本当だよ。
信じられないかもしれないけど……本当に何もない。」

そう答えながら私はふと思った。
それって、やっぱり、普通に考えるとおかしなことなんだろうな…
シュウはあの時以来、全くなにもしてこないけど、それはおかしなことなんだろうか?
別に今のままでも良いと考えてる私はやっぱりおかしいのかな?と……



「……そうか。」

そう言ったっきり、兄さんの言葉は途切れた。
沈黙はいやだけど、こっちから何かを話すのもはばかられて、私は兄さんが口を開くのを待った。



「辛いかもしれないがよく聞くんだぞ…」

「え…?」

唐突に発せられた兄さんの言葉の意味が、私には皆目わからず……私は、ただ黙って兄さんが話し始めるのを待った。




「……美幸……残念だがおまえは利用されてるんだ。
もしかしたら、あいつは何か犯罪絡みのことでもしでかして、それで、こんな田舎に逃げてきたんじゃないかと思う。
そして、行く場所がなくておまえの所に転がり込んだんだ。
……残酷なことを言うようだが…おまえを愛してるなんていうのは真っ赤な嘘だ。
冷静になって考えてみろ。あいつのルックスなら、女に不自由するわけはない。
わざわざ、おまえみたいな子を相手にするのには目的があるんだ。
それが体ではないとしたら、住む場所と金だ。
おまえは今バイトをしてるらしいが、その分も全部あいつに渡してるんじゃないのか?」

「違うよ!そんなことしてない!
兄さんはシュウのこと、全然わかってない!
シュウはそんな人じゃないよ!」

「わかってないのはおまえの方だ。
良いか、美幸。
理由もなく、あんな男がこんないなかに来る筈もなければ、おまえなんかを愛することもないんだ……」



『おまえなんかを愛することもない』




その言葉はぐさりと私の胸に突き刺さった。




そんなこと言われなくてもわかってる。
それに……それは、ある意味、真実だから。
設定がなければ、シュウが私みたいな女を相手にしないことなんて、兄さんに言われなくてもよくわかってる。
だけど、シュウを悪人みたいに思ってることだけはどうしても許せなかった。
それは、絶対に否定しないといけない!
でも……そのためには……

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