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「……ちゃんと食べてはいるようだな。」

「え…?」

食事中は誰もしゃべらず、台所にはテレビもないからすごく静かで気まずい雰囲気で進んでた。
茶碗に箸のぶつかる小さな音さえ響く食事は本当に気詰まりで……
ま、事情が事情だから仕方ないなと考え、私は黙々と料理を口に運んだ。
そして、ようやくごはんをほぼ食べきった頃、兄さんがぽつりとそんなことを言ったんだ。



「母さんからおまえがすごく痩せてるって聞いてたけど、本当に痩せてたから驚いたよ。
だから、食事もちゃんと採ってないんじゃないかと思ってた。」

「違うよ!
私、食事はきちんと食べてるよ。
ただ、お菓子の量が減って、コーラをやめて…それと規則正しい生活して…あとは前よりよく動くようになったからだと思う。」

兄さんは、私の顔をじっと見て……
そして、ゆっくりと頷いた。



「……確かに、よく動いてたな。
ちょっとびっくりした。」



どういうことですか!?
それじゃあ、以前の私がまるで動かなかったみたいじゃ……って、確かに、前はほとんど動かなかったけど……



「……母さんがとても心配してた。
おまえの様子がおかしいって。
おまえ……母さん達がここに来ることをずっと拒んでるそうじゃないか。
母さんはもしかしたら、おまえに誰か好きな人が出来たんじゃないかとも言ってた。
そのこと自体は悪いことじゃないけど、おまえはそういうことに免疫がないから、相手次第では大変なことになる…
……だから、俺が抜き打ちで見に来たんだ。」




そうか……やっぱり、母さんは気づいてたんだ、私の異変に。
母さんは鋭いから…父さんみたいに簡単には騙せなかったんだ。



「そうだったの……
兄さん…私がシュウと一緒に暮らしてて驚いたと思うけど…
私達、兄さんが考えてるような仲じゃないから。」

「男と女が三ヶ月以上、ひとつ屋根の下にいて、何もないなんてこと、世間が信じると思うか?
しかも、こいつは……おまえのことを愛してると言ったんだぞ。」

「それは……いろいろと深い事情があるの。
でも、本当に私達の間には何もない。
私も……シュウのことは大好きだけど…でも、本当に何もない。」



何もない、何もないって言うのも却って気恥ずかしいもので……
でも、本当に本当のことだから、ここはしっかり言っておかないといけないと思った。



「……すまないが、美幸と二人で話をさせてくれないか?」

「……あ…はい。」

シュウは、言われた通りに席を立ち台所を出て行った。
なんとなく心細くはなったけど、シュウにいやな話を聞かせないですむと思ったら、少しは救われた想いだった。


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