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「よく似合うじゃないか。」

シュウは私を見て微笑んだ。
本気で言ってるのか、馬鹿にしてるのか、それはいまいちはっきりしない笑みだった。



エプロンのことを考えた時、確かおばあちゃんのがあった筈だと頭にひらめいた。
おばあちゃんが亡くなってからもうだいぶ経つけど、家の中の私物はほとんどそのままになっていた。
最初にここに来た時、タンスの中をいくつか開いてそのことを知り、それ以来は、用事もないから開けることなんてなかったけど、確か、どこかに割烹着が入ってた筈…
記憶を辿りながらいくつかの引出しを見てみると、やっぱりそこには綺麗に畳まれたおばあちゃんの割烹着があって…
それを見たら、なんだか急に切なくなって、私は涙が出そうになった。
おばあちゃんとは一緒に暮らした事もないし、そんなに親しくしてたわけじゃない。
思い出がたくさんあるってわけでもない。
だからこそ、ここにも一人で住めたのかもしれない。
思い出される事がたくさんあったら、きっと切なくて住めなかったと思うんだ。
だけど、やっぱり、ふとした時におばあちゃんを思い出す事がある。
割烹着を見ただけで、こんな気持ちになるなんて、私は考えてもみなかった。

私はセンチな気分を払い除けるように顔を上げ、少し黴臭い割烹着を身に着けて台所に向かった。



「ひかり、包丁は使えるのか?」

「当たり前でしょ!」

「じゃあ、とりあえず…
そうだな、この野菜をサラダにするから切ってみて。」

シュウが指差したのは、さっき私が畑で取って来た野菜達。
料理はしないって言っても、いくらなんでも包丁くらい使ったことがある。
サラダ用なら、とりあえずは…
私は赤く熟したトマトを手に取り、まな板の上に置いて真っ二つに切った。




「ひかり…普段から野菜は洗わずに食べる派?」

シュウに指摘され、私は慌ててトマトを水道の水で洗った。



「シュウがそうやって監視してるから緊張して忘れただけ!」

ちょっと不機嫌になりつつも私はトマトを切り、次にきゅうりに取りかかった。




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