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僕は今まですっかり忘れていた、幼い頃の出来事を思い出して失笑した。



(へぇ…けっこう狭かったんだな。)



子供の頃はもっと広いと思ってた。
それはきっと僕が小さかったからだろう。



(……それにしてもすごいほこりだな…)



僕は、くしゃみが出そうになるのを堪えながら、おじちゃんの作ったブレスレットを探した。
あたりには何が入っているのかわからない大小様々な箱が積み上げられている。
ほこりを払いながら、一つ一つ箱を開け、その中身を確かめる作業は思ったよりも大変な作業だ。



(いつか整理しなきゃだめだな…)



もう誰も着ることがないであろう衣類の入ったものや、錆び付いた仕事道具の箱、僕らが小さい頃に使っていたと思われる小さなベッドがあったり、価値があるのかどうかは定かではない壷や絵もあった。
中には母の着ていた衣類の入った箱もあり…僕は複雑な想いでそれをみつめた。
母は僕がまだ小さい頃になくなった。
しかも、その何年か前には母の実家に戻っていたらしく…だから、僕には母の記憶というものがほとんどといって良い程ない。
だけど、それでも、その衣類はなんとなく懐かしいような想いもして、僕はドレスの一枚を箱の中から引き出した。
薄いピンク色のドレス。
広がった裾と袖口にはレースが縫いつけられており、見頃は細い。



(……母さんはまだこんなドレスを着れる程若いうちに亡くなったんだね…)



そんなことを考えると、母の短い人生が気の毒に想えた。
いや…本当に気の毒だったのは父さんかもしれない。
まだ小さかった僕と兄さんを抱え、再婚もしなかったんだから。
これからでも、良い人がみつかれば、父さんに幸せになって欲しいと思う。
でも、この町には父さんと釣り合う年齢の独身の女性はいないから、それは難しそうだ。
それに、こんなものを捨てずに置いてある所をみると、父さんは今でも一途に母さんのことを想っているのかもしれない。



(だとしたら…母さんは幸せ者だよね…)



僕は、心に温かいものを感じながら、母さんの服をそっと箱の中に戻した。


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