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「ダルシャ、待って。
そっちじゃないわ。」
セリナが後ろからダルシャに声をかけた。
ダルシャは振り返り数歩引き返すと、セリナの横を歩き始めた。
セリナをはさんでダルシャの反対側にはラスターが歩いている。
「セリナはこの山に入ってから、ひっぱられる強さが強くなったって言ってたよ。」
獣人達の村があるとされる山は意外な程に楽なものだった。
魔の山と同じような山を想像していた一行は、気が抜ける思いでそのなだらかな山道を歩いて行く。
魔物はいるにはいるが、そのほとんどが雑魚ばかりで、めったに人間を見ないせいなのか、一行の姿を見ては慌てて逃げ出した。
「そうか、願い石がここにいるのはやっぱり間違いないことなんだな。
それはそうと、エリオット…願い石のことどう思う?」
「不思議だよね…
話を聞く限り、僕達がみつけた硝子玉とそっくりなんだもん。」
「そっくりなんてもんじゃないぞ。
どう考えても同じもんだ。」
「それはそうだけど…でも、そんなことあるはずないよ。
だって、あれは、ここでみつけたんじゃない。
僕達の世界でみつけたものだよ。」
「確かに俺がひっかかってるのもそこなんだ。
でも、ラスター達の話を聞く限り、俺達がみつけたあれと願い石はどうしても同じものに思えてしまう。」
「僕も正直言ってすごく驚いたよ。
でも、もし同じものならどうしてこの世界の願い石が僕達の世界にあったんだい?
どう考えても話が繋がらないよ。
きっとよく似たものなんじゃないかって思うんだ。
そういうことって、たまにあるじゃないか。」
「外見もそっくりで、どっちもが願いを叶える石だっていうのか?
出来過ぎだ。
それに、文字のこともひっかかる。
俺が知ってる古代文字となんでここの文字が同じなんだ?」
「そんなこと、僕にもわかるわけないじゃない…」
今、その議論をしても、答えが出ない事は二人にはわかっていた。
その答えがわかるのは、実際にこちらの世界の願い石を見る時だということも…
そして、その時が近付いていることも二人は漠然と感じていた。
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