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「皆、すごい顔だな。」

「そういうあなたもすごいわよ。」



エリオットのいなくなった部屋で、五人はようやく落ち着きを取り戻した。



「フレイザー…本当に良いのか?」

「良いも何も、もうやっちまったんだからどうにもならないさ。
エリオット…今頃どうしてるかなぁ…
あいつにだけ大変なこと押し付けて悪かったな。」

「でも、なんでなんだ?
本当はジャネットの記憶を消すつもりだったんだろう?」

フレイザーはゆっくりと頷く。



「そのつもりだった。
でも……そうは出来ないことを知ったから。」

「そうは出来ないこと…?」

「フレイザーは父親になったんだ。」

「こ、こら、ダルシャ!
そういうことは……」

「なんで、そのことを知ってるんだ!?」

驚いて目を丸くするジャネットに、フレイザーは穏やかな笑みを返した。



「すまん。
お前の手紙を見たんだ。」

「手紙…?でも、あんたは文字が……」

「あぁ、だから、ここに来る前、ダルシャに見せて読んでもらった。」

「それで、二人はここに来るのが遅かったのね!」

フレイザーはセリナに向かって頷いた。



「そうなんだ。
昨夜、ジャネットが夜遅くに散歩に行くって言い出して…
なにかおかしいなって思ったんだ。
俺が一緒に行くっていったら、ひとりで行きたいなんて言うしさ。
で…そうっと帰って来て、手紙を読んでなんだかにまにましてるし…それで気になってたんだ。
人の手紙を勝手に見るなんていやらしいけど、心残りしたくなかったから、ダルシャに頼んで読んでもらって……」

「ジャネット、手紙って何のことなの?」

「リュシー叔母さんが、もし妊娠のことを言いにくいのなら、この手紙をフレイザーに渡しなさいって手紙を書いて来てくれたんだ。」

「妊娠…!?じゃ、父親になったっていうのは、ジャネットに子供が出来たってことなの!?」

フレイザーとエリオットは、はにかみながら頷いた。



「そうだったの…それはおめでとう!
……あ、それじゃあ、ジャネットが最近具合が悪かったのはもしかして……」

「そうなんだ。
最初にダルシャのお母さんが気付いたらしくって、それをリュシー叔母さんに話して、それでリュシー叔母さんに問い詰められて……」

「母上はああ見えて、意外と鋭い人なんだ。
私の秘密も良く見抜かれたものだ。」

昔を思い出すような遠い目をして、ダルシャは苦い笑みを浮かべた。




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