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「ジャネット…!」
フレイザーはジャネットの傍に近付き、その華奢な身体を抱きしめた。
「ボクだって寂しいよ。
皆とは、家族みたいにして付き合ってきたんだもん。
だけど…やっぱりここにはいられない。
ボク達には本当の家族がいるし、ここはボク達がいる場所じゃないんだ。」
「エリオット…一つだけ聞かせて。
あなた達は、自分の世界に帰りたいために、私達を利用しただけじゃないわよね?」
「セリナ…当たり前じゃないか!
そりゃあ、結果的にはそうなるのかもしれない。
ボク達だけじゃ、願い石を集めることもきっと出来なかった。
でも……皆と一緒に過ごした日々に、ボク達は何の偽りもないよ。」
「……そう、それが聞けて良かったわ。」
セリナの瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。
セリナばかりではなく、見つめ合うエリオットの瞳にも…感情をあまり表に現さないダルシャやラスターの瞳にも……
「願い石はたいそうな奇蹟を起こしてくれたものだな……
さぁ、フレイザー…エリオット…そろそろ行った方が良いんじゃないか?
あまり長居をすると、ますます別れが辛くなるぞ。」
「……そうだね。
フレイザー…これで、皆の記憶を戻して……」
指で涙を拭いながら、エリオットは紫の双子石をフレイザーに手渡した。
フレイザーも同じように涙を拭い、紫の双子石に願いの解除を宣言した。
砕け散った双子石に、エリオットはほっと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、これで最後だね。
もしも、君が辛かったらボクが……」
「いや……俺がやる。」
「や、やめろ…!私は、フレイザーの記憶を消したくない!」
立ち上がろうとするジャネットを、ラスターとダルシャが素早く引き止めた。
「……忘れるんだ。それが君のためだ。」
「いやだ!離せ!
私は、絶対にフレイザーを忘れたくない!」
ジャネットは泣き叫びながら、必死に二人の手を振り払おうともがいた。
それはひ弱なジャネットの力とは思えない程、強い力だった。
「フレイザー、早く!」
険しい顔をしたラスターが、フレイザーに向かって怒鳴る。
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