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「もう一つ、続けていくぜ。」
そう言いながら、フレイザーは次に黄色の双子石を手に持ち、願いの解除を宣言した。
「あ、あれっ?」
「なんだか……変だな……」
四人は、エリオットの変化に戸惑いつつも、何が変わったのかまだはっきりとはわからないでいた。
「……ボク、本当は男なんだ。」
「えーーーっっ!」
いつもとは少し違う低い声に、皆、目を見開き、エリオットを穴の開くほどみつめた。
「なぜ、そんなつまらないことをしたんだ?」
「だから、さっきも話した通り、あの頃の俺達は、この願い石のことがよくわかってなかったんだ。
今にして思えば、願い石をなんてつまらないことに使ったんだろうって思うけど……あの時は単なる悪ふざけで……」
「それでは、君達は五つの願い石を、そんなつまらないことばかりに使ってしまったのか?
それと、なぜ、こちらの世界に来たんだ?」
「それはね…最初にボクがマジカルファンタジーみたいな世界に行きたいって言ったんだよ。
木箱をボクがみつけて、蓋の裏に書いてある文字が確か『願い』だってフレイザーが言うから、それでね……
あ、マジカルファンタジーって言うのは、その頃、発売される予定だったゲームのことなんだ……」
四人は、エリオットの話がいまひとつ理解出来ないかのように、何度も首をひねっていた。
「とにかく、君達はそれで五つの石を使ったっていうことだな。
五つ……?あと一つは何に使ったんだ?」
「最後の一つは、俺達がいない間、俺達の事を知ってる人が、皆、俺達のことを忘れるようにって……」
「なるほどな…最後に一番まともな願いをかけたんだな。」
二人は揃って頷いた。
「そんなわけで、俺達は、本当のことが言えなかったんだ。
だから、記憶をなくしたってことにした……」
「ちょっと待って…
フレイザー…それじゃあ、あなた…いつかは元の世界に帰るって決めてたくせに……
それなのに、ジャネットと結婚したっていうの?」
「……すまない。
でも……俺がジャネットを愛してるのは嘘じゃないんだ。
俺は心から……」
「本当だよ!
フレイザーはそのことですごく悩んでた。
だけど……こうするしかなかったんだ。
ここにひとつだけある願い石で、ジャネットからフレイザーの記憶を全部消して戻るつもりだったんだ。」
「そんな……」
セリナは、俯くジャネットの手をしっかりと握りしめた。
「私は……いやだ……」
「ジャネット……」
「私は、記憶なんて消さない!
あんたの思い出はずっと持っていたいんだ。
……どんなに離れてても、ずっとあんたのことを想っていたい……
それは私の自由だろ!?」
かすれた声でそう言ったジャネットの頬は、とまらない涙でぐっしょりと濡れていた。
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