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「エリオット……あらたまって、一体、何の話なんだ?」
「う、うん、もう少しだけ待って。
皆がそろったら、話すから。
ジャネット、フレイザーはどうしたの?」
「なんだかわからないけど、先に行けって言われたから……」
「そう……」
居間には、フレイザーとダルシャの姿だけがなかった。
「本当に何やってんだ?
俺、ちょっと見て……」
ラスターが立ち上がろうとした時、扉が開き、ダルシャとフレイザーが姿を現した。
「遅いな、全く…」
「すまなかった。
さて……それでは、早速、話を聞こうか。」
「あ…あぁ……」
皆の視線が、エリオットとフレイザーに注がれた。
「えっと……まずは……」
エリオットは口籠り、救いを求めるようにフレイザーに目を遣った。
「まずは皆に謝らないといけない。
すまなかった。
俺達は、今までずっと皆に嘘を吐いてた。」
「嘘…?どういうことなの?」
「何のことだ?」
フレイザーの一言で、その場に、ざわめきが広がった。
「……本当にごめん。
ボク達……記憶を失ってるって言うのは嘘だったんだ。」
「えーーーーっ!なんだって!」
「どうして?どうしてそんな嘘を吐いてたの?」
「……とにかく、二人の話を聞こうじゃないか。」
ダルシャの一声によって、その場は再び静寂を取り戻した。
「俺達が今から話す話は、すぐには信じてもらえないかもしれない。
そのくらい突拍子もない話なんだ。
でも、それは嘘じゃない。」
エリオットはフレイザーと顔を見合わせ、深く頷いた。
「実はね……ボク達は……ボク達はこの世界の者じゃないんだ。
違う世界からやってきたんだ。」
「えっ!?」
最初に反応したのはジャネットだった。
ジャネットは、過剰な程反応し、青白い顔をしてフレイザーをみつめていた。
「何なんだよ、違う世界って。」
「だから……こことは全く違う世界だよ。
ここよりもずっと文明が進んでて…多分、君達には想像もつかない世界だ。」
「文明が……あ、そういえば、あんたらと最初に会った時、確かにおかしなものを持ってたな。
あれのお蔭で、道具屋に結構な金をもらえた…」
「え…?あ…あぁ、そうだったね。」
二人は、この世界に来て間もない頃、持っていた懐中電灯や腕時計を売ったことを思い出した。
この世界にはまだ存在しないものばかりだったせいか、あれを見た時の道具屋の主人のひどく興奮した顔が二人の脳裏をかすめた。
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