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楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。
毎日、皆であちこちに出かけては、様々な思い出を心に刻み込んだ。
マリエルもずっと別荘に泊まり込み、皆と行動を共にした。

やがて、マキシムが屋敷に戻り、その後、リュシー夫妻も戻ることになった前夜、リュシーはこっそりとジャネットを呼び出した。



「ジャネット……
あのこと、フレイザーにはまだ話せないの?」

「う…うん。
実は、結婚式の日に話そうと思ってたんだけど…フレイザーが……」

「フレイザーがどうかしたの?」

「え…あの……」

いつものフレイザーとは明らかに違うあの異変について話したいという気持ちはありつつも、その気持ちをジャネットはぐっと抑えた。



「……あの日は、フレイザー、早くに寝てしまったんだ。」

「まぁ、そうだったの。
緊張して疲れたのかもしれないわね。」

「その後も、毎日出かけてるから…その……」

そう言って、ジャネットは口籠ったまま俯いた。



「……そんなことじゃないかと思ったわ。
それでね…あなたがどうしても言い出しにくいのなら、これをフレイザーに渡しなさい。」

リュシーは、封緘していない白い封筒をそっと差し出す。



「これは?」

「あなたの妊娠のことが書いてあるわ。
心配だったら読んでみて。」

ジャネットは、中の手紙を取り出し、それに目を通した。
手紙には、ジャネットが妊娠していること、そして、生まれて来る子が獣人だったら…と、彼女がひどく心配していることなどが簡潔に書いてあった。



「ありがとう、リュシーさん。
……でも、これは使えない。」

「使えない?どうして?
私、何かおかしなことでも書いたかしら?」

「そうじゃない。
フレイザーは記憶をなくしてから、文字も読めなくなってるんだ。」

「まぁ、そうだったの…!
じゃあ、あなたが直接話すしかないわね。
頑張るのよ、ジャネット……」

「ありがとう、リュシーさん。」

リュシーの温かな抱擁に、ジャネットは心まで温まってくるのを感じていた。


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