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「楽しかったねぇ…」

「本当にきれいな所だったよね。」

夕方になり、散策から戻ったダルシャ達の乗った馬車が別荘の敷地に着いた。



「ダルシャ!」

見知らぬ金髪の女性が、大きな声を張りあげ、ダルシャに向かって駆け出したかと思うと、真っ直ぐにその胸に飛び込んだ。



「……マリエル…?マリエルなのか?」

「久しぶりね!何年ぶりになるかしら?」

女性は周りにいる者達のことはまるで気にもならないかのように、ダルシャだけをみつめていた。



「そうだな…もうかれこれ…十年…いや、それ以上か?
君が嫁いでから会うのは初めてじゃないか?」

「マリエル!ひさしぶりだね!」

「まぁ、マキシム!ひさしぶり!」

「あなた、マリエルなの?」

「まぁ、リュシー叔母様まで…!」



(ねぇ、セリナ…あの人、誰なんだろう?
綺麗な人だね。)

(なんだか、ダルシャ達の知り合いみたいね。
幼馴染みかしら?)



マリエルと呼ばれる女性は、夕食の席にもダルシャにぴったりと寄り添って現れた。



「皆にも紹介しておこう。
彼女はマリエル。
彼女の家はうちのすぐ傍で…つまりは幼馴染みというやつだ。
マリエル、ここにいるのは私の友人だ。
彼女がセリナ…そして…」

マリエルは、皆の紹介にもあまり関心はない様子で、ずっとダルシャの顔ばかりみつめていた。



「彼女が結婚してからは、ずっと会ってなかったのだが…」

「ダルシャ、私、今は独身なのよ!」

「え…それでは……」

マリエルは少しも悪びれた様子はなく、大きく頷く。



「元々、愛情なんてなかったんですもの。
ダルシャ…知ってるでしょう?
私は小さい頃からあなたが好きなのよ。
だけど、あなたがはっきりしてくれないものだから、両親に無理矢理……」

ダルシャは、何も言わずただ小さく肩をすくめた。


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