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「おめでとう!ジャネット!」
「おめでとう!」
口々に述べられる祝福の声…
そして、両側から投げかけられる花びらが蝶のように舞う中、二組の夫婦がしずしずと…どこか照れくさそうに歩いて行く……
町の教会で、二組の結婚式が執り行われた。
フレイザーとイリアスは、緊張しつつも新婦の美しさに感激し、涙を浮かべるほどだった。
数少ない町の住民達も、二組の夫婦を祝いに駆けつけ、皆が予想していたよりも華やかで賑やかな式となった。
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「二人とも本当に綺麗だったわね!
フレイザー、ジャネットに惚れ直したんじゃない?」
「……確かにそうだな。
本当に綺麗だった……」
そう言って、ジャネットのことをじっとみつめるフレイザーを見ながら、エリオットは複雑な想いを感じていた。
あと数日でこの世界を離れるという時に、ジャネットの花嫁衣裳を見たフレイザーの心情を考えると、エリオットにはなんといえば良いのかわからなかった。
(幸せな思い出が多ければ多い程、別れはきっと辛くなるよね。
それとも、その逆なのかな。
そういう思い出をたくさん作っておいた方が、フレイザーは幸せなのかな…)
「セリナ…あと数日はゆっくりしていられるか?
それとも、一日も早くお母さんの傍に戻りたいか?」
「もうしばらくは大丈夫よ。
きっと、一度あそこに戻ったら、しばらくは皆にも会えないと思うし、それまでにみんなといろいろ楽しい思い出を作りたいから。
……って、何年も一緒に旅をして、思い出はもう一杯あるっていうのに、私って欲張りね。」
「ううん、ボクもそう思うよ。」
「あら。でも、エリオットはこのままダルシャの所でお世話になるんでしょ?
フレイザーやジャネットもラスターも、ダルシャと一緒に働くのよね?」
「ま、まぁ、それはそうなんだけど……」
今はそう言うしかないとわかっていても、嘘を吐くことにエリオットの胸は痛んだ。
「では、明日はこの近くの森にでも行ってみよう。
とても、美しい場所なんだ。」
「それは楽しみね!」
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