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「なんだかこの数日間、すごく早かったね。」
「そうだな。」
「……フレイザー…もう一度聞くけど、本当に良いんだね?」
「あぁ……だって、もう、機会がないからな。
セリナをそう長い間、ひっぱっとくわけにもいかないし。」
「それはそうだけど……」
二人は、話し合い、別荘のある町で自分達の秘密を皆に打ち明けることに決めた。
結婚式を済ませ、しばらくその町でのんびりした後に、今まで皆に隠していた秘密を打ち明け、そのまま元の世界に戻ることを決めたのだった。
「あぁ、今からどきどきするよ。
皆、びっくりするだろうね。
それに…みんなと別れるの…すごく辛いよ。」
「……そうだな。」
「あ……ごめん。
フレイザーの方が辛いよね……」
「……俺なら大丈夫だよ。
最初から覚悟してたことだから……
ジャネットも大丈夫だ。
……あいつの記憶は消していくから……」
そう言うと、フレイザーは不意に空を見上げた。
「この二つの月を見るのもあと少しなんだなぁ…」
「……そうだね。
おかしいよね。
やっと、本当の自分に戻れて、自分たちの世界に戻れるっていうのに…
嬉しさよりも寂しさの方が大きいなんてね……」
「……長くいすぎたんだな、きっと。」
二人は黙ったまま、空に浮かぶ月を見上げ続けた。
彼らの胸に去来するのは、この世界に来てからの様々な出来事…
悲しかったことや嬉しかったこと、驚いたことや感動したこと…
そして、願い石を通じて知り合った大勢の人々のこと……
「本当に…寂しいね……」
エリオットの呟きをフレイザーは聞こえなかったかのように、ずっと空をみつめていた
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