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「……なるほどな。
だから、あんたはあの女を憎んでたわけだな。」

「まだ続きがある。
俺は、何か月もかかってあいつの家を探し回った。
そして、ようやくその屋敷をみつけた……
俺が思い描いてたよりも何倍もでかい立派なお屋敷だった。
そこで、リュシーのことを訊ねたら、あいつはある貴族とすでに結婚してここを出たって言われたんだ。
……その時の絶望感ったら、なかったぜ。」

「それがなぜ、復縁になったんだ?
そんな酷い女となぜ……」

「話はまだ終わりじゃない。
……それは、すべて、嘘だったんだ……」

「……嘘?」

イリアスは、ゆっくりと深く頷く。



「そうだ、本当は全然違ったんだ。
リュシーは、彼女を探しに来た男達に、無理矢理に屋敷に連れ戻された。
金を渡したら、俺が喜んでリュシーと別れることを承諾し、子供は里子に出したと聞かされたそうだ。
そして、すぐにフーリシアに連れて行かれた。」

「な、なんだって…!?」

「あいつの両親としては、そう言えば、あいつも俺の事なんてすぐに忘れて、身分の釣り合う男と再婚するだろうと考えたんだろうな。
だが、あいつはそうはしなかった。
どんなに言われても、再婚することはなかったらしいんだ。
あいつは…俺が、金で別れることに承諾したことを信じながらも、それでもずっと俺とおまえのことを想っててくれたんだ……」

イリアスはそう話しながら、瞳にたまった涙を指で拭った。



「なんてことだ……お互いがそんな嘘に騙されてたなんて……」

「……本当に長い年月だった。
だが、ダルシャがリュシーに会いに行ったことから、俺達の運命はまた動き出したんだ。
その件以来、リュシーはアンドリューとは疎遠になっていたらしいが、ダルシャと会って、なぜだかリュシーはアンドリューに会おうと考えたらしいんだ。
そして、そこで、昔のその嘘について話を聞かされた。
リュシーはそれをそのままにはしておかなかった。
わざわざ、記憶もおぼろげなスラムを探して、俺に会いに来てくれたんだ。
そのおかげで、俺は真実を知ることが出来た。
リュシーが俺とお前を捨てたのではないということを…
別れてからもずっと俺とおまえのことを愛してくれてたってことをな……
俺はあんなに死を望んでたのに、それを聞いた時は生きてて良かったって痛感した。
生きてなかったら、ずっとリュシーを憎んだままだったんだからな…
本当にありがたいことだぜ…」

イリアスは溢れ出して止まらなくなった涙を両手で代わる代わるに拭った。




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