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「信じられん……」
「……ダルシャ…このにぎやかな夕餉の席で、なんという顔をするのだ。」
「しかし、父上…私とラスターが従兄弟同士だなんて……」
「確かに、信じられないような話ではあるな。
おまえとリュシーの息子であるラスターが、この広い世の中でたまたま出会うなんてな……」
「本当に素敵なご縁だわ!」
素直にはしゃぐリュシーとは裏腹に、ラスターとダルシャは深く俯いて、目の前の豪華な料理にもなかなか手を伸ばさなかった。
「まるで弟が出来たみたいで、僕も嬉しいです。
あ、ラスター…僕はダルシャの弟のマクシミリアンだよ。
よろしくね。」
「あ…あぁ、よろしくお願いします。」
「そうだ、ボク達、まだ自己紹介してなかったね。
ボクはエリオットです。」
「私はセリナです。
どうぞよろしくお願いします。」
「あ…俺は、フレイザー…それと、こいつは……妻のジャネットです。」
フレイザーに紹介され、ジャネットはぎこちなく微笑んだ。
「皆さん、ダルシャが世話になりました。
ところで…皆さんはどういういきさつでダルシャと出会われたんですか?」
「父上、そのことはまた夜にでも……」
「おじさん、ダルシャに世話になったのはボク達の方なんです。
彼にはいろいろな面で、とても助けてもらいました。」
「ダルシャがいてくれなかったら、きっと私達はこんなに長い間旅を続けることも、目的を遂げることも出来ませんでした。」
息子の良い評価に、アンドリューはどこか機嫌の良さそうな顔で頷いた。
「そうでしたか。
おまえも少しは人の役に立っていたようだな。
ところで…結婚式を挙げたいというのは……」
アンドリューはフレイザー達の方に目を遣った。
「そうです、彼ら、フレイザーとジャネットです。
長い間、一緒に旅をしてきた彼らを、ぜひ、私の手で祝福したいと思っています。」
「プランはもう立ててあるのか?」
「はい、だいたいのところは……
それと、私は新たな事業を始めようと思っておりまして、そこでフレイザーやジャネット、エリオット…そして、ラスターに手伝ってもらおうと思っています。」
「なに、新しい事業を……?
そうか、そのことについてもまた詳しく聞かせてもらおう。」
ダルシャが働く意欲を見せたことが嬉しかったのか、アンドリューの頬がわずかに緩んだ。
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