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「信じられない……!」
「俺だって……」
離れの居間で、皆、まだ驚きから覚められないでいた。
中でも当の本人のラスターは、険しい顔で何度も頭をひねっていた。
「ラスターが、リュシーさんの子供だったなんて……」
「あ……それじゃあ、ラスターとダルシャはいとこってことになるんだ!」
「な、なんだって!?
俺とあいつがいとこ?
や、やめろよ!あんないいかげんで女たらしな奴と、血がつながってるなんてぞっとする。」
「きっと、ダルシャも同じことを言うでしょうね。」
ざわめく皆とは裏腹に、リュシーは一人、楽しそうな顔で微笑んでいた。
「これぞ、運命ね。
私の坊やが、ダルシャと一緒に旅をしてたなんて……」
(ぼ、坊やだって…あのラスターが坊や…)
(だ、だめよ、エリオット、そんなこと言っちゃ。)
エリオットとセリナは小声で囁き合いながら、こみ上げる笑いに肩を揺らす。
「ラスター…こんな所で会えるとは思ってなかった。」
「親父…身体の具合はどうなんだ?」
「あんまり良くはない。
でも、あのままだったら俺は間違いなく死んでいた。
リュシーに会って、ここで養生させてもらって、これでもまだマシになった方なんだ。」
「ラスター…今夜は一杯話しましょうね。
話したいことがありすぎて、何から話せば良いのかわからないわ。」
「俺もだ…おまえには謝らなきゃならないことがたくさんある…」
ラスターは、大きく目を見開き、信じられないような顔で父親をみつめた。
「どうしたんだ、親父…
あんたらしくないことを言うんだな。」
ラスターの言葉にイリアスは苦笑する。
「そうだな。
俺は今までこんなに素直になれることはなかった。
やっぱりあんなところで暮らしてたせいで、心まで腐ってたんだな。
ここに来て、人間らしい暮らしをしているうちに、いろんなことに気付くことが出来たんだ。
俺は、本当に間違っていた。
お前には申しわけないことばかり……」
「やめろ!そんな話は聞きたくねぇ!」
吐き捨てるように怒鳴ると、ラスターはそのまま居間を飛び出して行った。
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