36






「信じられない……!」

「俺だって……」



離れの居間で、皆、まだ驚きから覚められないでいた。
中でも当の本人のラスターは、険しい顔で何度も頭をひねっていた。



「ラスターが、リュシーさんの子供だったなんて……」

「あ……それじゃあ、ラスターとダルシャはいとこってことになるんだ!」

「な、なんだって!?
俺とあいつがいとこ?
や、やめろよ!あんないいかげんで女たらしな奴と、血がつながってるなんてぞっとする。」

「きっと、ダルシャも同じことを言うでしょうね。」



ざわめく皆とは裏腹に、リュシーは一人、楽しそうな顔で微笑んでいた。



「これぞ、運命ね。
私の坊やが、ダルシャと一緒に旅をしてたなんて……」



(ぼ、坊やだって…あのラスターが坊や…)

(だ、だめよ、エリオット、そんなこと言っちゃ。)



エリオットとセリナは小声で囁き合いながら、こみ上げる笑いに肩を揺らす。



「ラスター…こんな所で会えるとは思ってなかった。」

「親父…身体の具合はどうなんだ?」

「あんまり良くはない。
でも、あのままだったら俺は間違いなく死んでいた。
リュシーに会って、ここで養生させてもらって、これでもまだマシになった方なんだ。」

「ラスター…今夜は一杯話しましょうね。
話したいことがありすぎて、何から話せば良いのかわからないわ。」

「俺もだ…おまえには謝らなきゃならないことがたくさんある…」

ラスターは、大きく目を見開き、信じられないような顔で父親をみつめた。



「どうしたんだ、親父…
あんたらしくないことを言うんだな。」

ラスターの言葉にイリアスは苦笑する。



「そうだな。
俺は今までこんなに素直になれることはなかった。
やっぱりあんなところで暮らしてたせいで、心まで腐ってたんだな。
ここに来て、人間らしい暮らしをしているうちに、いろんなことに気付くことが出来たんだ。
俺は、本当に間違っていた。
お前には申しわけないことばかり……」

「やめろ!そんな話は聞きたくねぇ!」

吐き捨てるように怒鳴ると、ラスターはそのまま居間を飛び出して行った。


- 737 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -