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「あ、多分、あれが離れだな。
すぐ傍って言っても、かなり……あ、ラスター!」

庭の片隅に佇むラスターを見つけ、フレイザーが手を振り、声をかけた。
ラスターはすぐに反応し、皆の所に駆け出した。



「あぁ、良かった。」

「ラスター、あんな所で何してたんだよ。」

「ちょっとトイレを探してたら、わからなくなって…
一旦、外に出たらわかるかと思ったんだけど、却ってわからなくなってな。」

フレイザーと話すラスターを、リュシーは真剣な瞳でみつめる。



「リュシーさん…どうかしたの?
この子が、さっき言ってたラスターだよ。
ボク達がリュシーさんの所に行った時は…」

「エリオット!!」

エリオットは、ラスターを横目で見ながら、小さく首をすくめた。



「あなた…ラスターっていうの?」

そう言ったリュシーの声はわずかに震え、明らかに普通ではないことを皆が感じたが、その理由は誰にもわからなかった。



「え……そ、そうだけど……」

「出身はこの大陸なの?」

「あぁ、そうだ。
ただ、こんな良いとこじゃなくて、スラムだけどな。」

「スラム…!?」

「あ、何すんだ!」

リュシーは、ラスターの前髪をかき上げ、そして、彼の手首をつかみ、右手の平をみつめた。



「……ラ、ラスター……」

「あ、あぁっっ!」

急にリュシーに抱きしめられたラスターは、激しく戸惑い、おかしな声を上げた。



「リュシーさん…ど、どういうこと!?」

「エリオット……この子は…ラスターは、私の子なの!!」



「えーーーーーっっ!!」



「ば、馬鹿なことを言うな!
な、なんで、俺があんたの……」

「その緑色の瞳…手の平の真ん中のほくろ……間違いないわ!」

「おかしなことを言わないでくれ!」



「リュシー…どうかしたのか…?」



かすれた声に皆が振り向くと、そこには杖をついた痩身の男性が立っていた。



「あなた……」

「親父…!」



「ラスター…ラスターじゃないか!
どうして、こんな所に……」



男性の一言で、その場の時間が止まった。


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