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「カルヴィン…世話になったが、私達は明日、ここを発とうと思う。」

「そうですか。寂しくなりますね。」

エルフの里に来て、一週間ほどが経ったある日の夕食の席で、ダルシャがカルヴィンに別れを切り出した。



「これからはセリナの事もよろしく頼む。」

カルヴィンは微笑みながらゆっくりと頷いた。



「この数日間で、セリナはお母さんの世話がうまくなりましたね。
それに、セリナに世話をしてもらってお母さんもなんだか嬉しそうですね。」

「ねぇ、カルヴィン……
セリナのお母さんがセリナのことを思い出すようなことは、この先もないのかな?」

「……それは私にもわかりません。
突然、思い出されるかもしれませんし、一生、あのままかもしれません。
それは誰にも分らないことでしょうね。」

「思い出したら良いのになぁ…」

「でも、思い出したら、自分の身に起こった怖いことも思い出すんだぜ。
自分が石の巫女だってことも…
思い出すことが幸せとは限らないんじゃないか?」

ラスターの言葉に、エリオットはただ深くうなだれるだけだった。



「感じ方は人それぞれです。
まだどうなるかもわからないことを考えても仕方ありません。
今は、あのお母さんと素直に向き合うだけ…それで良いのだと思いますよ。
セリナにはもうすでにそのことがわかってるようですし……」

「……そうだな。さすがはセリナだ。」

「あぁ…でも、なんだか寂しくなるな。
ここに、セリナを探しに来て…一緒に旅に出て何年か経って……
そして、またここで別れるのか……」

ラスターの言葉に、皆の脳裏にも数年前のこの場所での出来事が鮮明によみがえる。



「……本当に寂しくなるね……」



エリオットの瞳には、すでにきらめく涙が溜まっていた。




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