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「アルディ…さっきは本当にどうもありがとう。」

「いや…勝手な真似をして悪かったな。」

皆より少し早くに起きて、宴の後始末をしていたアルディの元に、ジャネットとフレイザーが近付き、声をかける。



「そんなことない。
獣人の婚礼をさせてもらったこと…とても嬉しかった。」

そう言ったジャネットの横顔をみつめながら、フレイザーは薄笑いを浮かべた。



「……何なんだよ。」

「いや…少し前のおまえだったら、あの大切な衣装をどうしてただろうって考えると……」

「少し前のジャネットは、今とは違うのか?」

フレイザーは肩をすくめ、ジャネットの方に目を遣った。



「……そうだよ。少し前の私は酷く獣人を憎んでたし、獣人の血が流れる自分自身をも憎んでた。」

「それがなぜ…?」

「私は、母さんが獣人に襲われて無理矢理に子を産まされたと思ってた……確かにそれは真実なんだけど、獣人が命がけで私達親子を逃がしてくれたことも、母さんと父さんが愛し合ってたことも信じてなかったし、その後、父さんやジュリアスがそのことでずっと辛い想いをしてたことも全く知らなかった。
……私だけが辛い想いをしてきたと思いこんでたんだ。
だから、獣人が憎くて憎くてたまらなかった。
でも…ジュリアスと出会って本当のことを知った。」

「なるほど……そういうことだったのか。」

「獣人の血が流れていることを誇りに感じるとか、まだそこまでは思えない。
獣人全部を好きだとも思ってない。
でも、少しずつ自分の運命を受け入れられるようにはなってきた。
それは、獣人の血が流れているとわかってもまるで差別をしない仲間達や、こんな私のことを愛してくれるフレイザーに出会えたからだと思ってる。
それに、あんたや村の人達はこんな私を獣人だと認めてくれた。
だから、あんなに大切な衣装を着せてくれた……」

アルディは、ジャネットの肩に優しく手を置いた。



「確かに俺と君の姿はまるで違う。
でも、君の身体の中には俺と同じ血が流れている。
いつになるかはわからないが、獣人だ人間だ魔法使いだなどということは関係なく、誰もが自由に結ばれる世の中がきっといつか来るだろう。」

「そうだな…早くそんな世の中が来れば良いな。」

三人の視線の先には穏やかな笑みを浮かべるダルシャがいた。



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