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「アルディ…その人間達が悪い奴じゃないことはわかっている。
しかし、わしらに何の断りもなく獣人の婚礼の衣装を貸すというのはどうかと思うぞ。」

「彼らは俺にとって大切な友人だ。
それに、俺はここの族長なんだ。
俺の一存で決めても構わないと思うが……」

「そんな……」

アルディの強気な発言に、獣人達のざわめきはさらに大きくなった。



「みんな、聞いてくれ!」

ジャネットの発した大きな声に、その場は、一瞬、静寂を取り戻した。
獣人達もフレイザーやアルディも、驚いたような顔でジャネットをみつめる。



「今度、みんなの仲間になったジュリアスは……実は、私の双子の兄弟なんだ。」



ジャネットの言葉に、再び、獣人達のざわめきが広がった。



「兄弟って…あんたは人間じゃないか!」

「確かに、私は人間に見えるかもしれない。
でも……私は、違うんだ。
私の母親は人間……そして、父親は獣人だ。
ジュリアスは父親に似て獣人として…そして私は人間として生まれた。」

「嘘だ!人間の子は、殺されるのがしきたりのはずだ。」

「そう…私も私の母も本当は殺されるはずだった。でも……」

ジャネットは、そこまで話すと言葉に詰まりそのままそっと俯いた。



「俺の…いや、俺達の父さんが、命を賭けて二人を逃がしたんだ!」

いつの間にかジャネットの隣にはジュリアスの姿があった。
獣人達は彼の言葉に驚いて何も言えず、ただ、黙って二人の話に聞き入った。



「……詳しい話は、あとで二人からゆっくり聞けば良い。
今、本人達が話したように、彼女はハイブリッドだ。
だから、彼女にはこの衣装を身に付ける資格があると思う。
フレイザーは人間だが、彼女がハイブリッドだということを知った上で、結婚することを決めたんだ。
だから、彼にもこの衣装を身に付ける資格があると思ったんだ。
……皆は俺とは違う意見か?」

アルディの低くはっきりした声が広場に響くと、まばらな拍手があちらこちらから始まり、やがてそれは広場全体に広がった。



「おめでとう!」

「おめでとう、ジャネット!」

様々な声が二人に祝福の言葉を投げかける。
二人はまだどこか戸惑いの残る顔を見合わせ…やがて、静かに微笑んだ。




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