19


「どうだ?私の言った通りだろう?」

ジュリアスは、涙を拭いながら小さく頷く。



「何が言った通りなんだ?」

「アルディは、絶対に受け入れてくれるというのに、ジュリアスはなかなかそれを信じなくてな。
すぐ傍まで来ていながら、ここへ来るのを躊躇ったほどなんだ。」

「ダルシャ…そんなこと、今言わなくても……」

「本当のことじゃないか。」

ダルシャとジュリアスのやりとりに、周りの者達はくすくすと笑った。



「よし、今夜はジュリアスの歓迎の宴だ!」

「そうなると思って、今日は酒を買って来てあるんだ。」

「それはありがたい!
では、早速、準備に取り掛かろう!」

「フレイザー、ジャネット…皆を呼んで来てくれないか?」

「あぁ、わかった。」

二人が外に出て行くのを確認すると、ダルシャはアルディに小声で話しかけた。







「今日から仲間になったジュリアスだ。
皆、仲良くしてやってくれ!」



その晩は、村の広場でジュリアスの歓迎の宴が催された。
獣人達は、皆、ジュリアスのことを温かい気持ちで受け入れ、それを肌で感じたジュリアスは再び感動の涙を流した。



「みんな!ひさしぶりだな!」

「カインじゃないか!君も元気そうだな。
どうだ?ここでの暮らしには慣れたか?」

「あぁ…もうすっかりな。
俺、本当にここに来て良かったよ。
あ、あんたも心配することないぜ。
ここの者達は皆親切だし、本当に良い所だ。」

「そ、そうなんですか。
よろしくお願いします。」

ジュリアスは、どこか緊張した様子で微笑んだ。



「カイン…皆に報告することがあるんじゃないのか?」

「え……」

「何、何?カイン、何かあったの?」

カインは頭を掻きながら、少し離れた所に向かって手招きをした。
それに応えるように、子供を背負った一人の女性が前に進み出た。



「こ、こんばんは。」

「……紹介するよ。つ…妻のアイリスだ。」

「……妻って…それじゃあ……」

カインは照れくさそうに頷く。



「それじゃあ、その子は……!」

「サーシャっていうんだ。
……可愛いだろ?」

カインはそう言って顔を綻ばせた。



「なんでもダルシャから一文字もらって名付けたらしいぞ。」

「アルディ!それは秘密だって言っただろ!」

困ったような顔をして抗議するカインに、アルディは大きな口を開けて笑い飛ばした。



「わぁ、毛がもふもふして気持ち良いね。」

「可愛いわ。
この子…女の子なの?」

セリナとエリオットは、サーシャの傍に寄り添ってはしゃぎまわる。


- 720 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -