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「どうだ?私の言った通りだろう?」
ジュリアスは、涙を拭いながら小さく頷く。
「何が言った通りなんだ?」
「アルディは、絶対に受け入れてくれるというのに、ジュリアスはなかなかそれを信じなくてな。
すぐ傍まで来ていながら、ここへ来るのを躊躇ったほどなんだ。」
「ダルシャ…そんなこと、今言わなくても……」
「本当のことじゃないか。」
ダルシャとジュリアスのやりとりに、周りの者達はくすくすと笑った。
「よし、今夜はジュリアスの歓迎の宴だ!」
「そうなると思って、今日は酒を買って来てあるんだ。」
「それはありがたい!
では、早速、準備に取り掛かろう!」
「フレイザー、ジャネット…皆を呼んで来てくれないか?」
「あぁ、わかった。」
二人が外に出て行くのを確認すると、ダルシャはアルディに小声で話しかけた。
*
「今日から仲間になったジュリアスだ。
皆、仲良くしてやってくれ!」
その晩は、村の広場でジュリアスの歓迎の宴が催された。
獣人達は、皆、ジュリアスのことを温かい気持ちで受け入れ、それを肌で感じたジュリアスは再び感動の涙を流した。
「みんな!ひさしぶりだな!」
「カインじゃないか!君も元気そうだな。
どうだ?ここでの暮らしには慣れたか?」
「あぁ…もうすっかりな。
俺、本当にここに来て良かったよ。
あ、あんたも心配することないぜ。
ここの者達は皆親切だし、本当に良い所だ。」
「そ、そうなんですか。
よろしくお願いします。」
ジュリアスは、どこか緊張した様子で微笑んだ。
「カイン…皆に報告することがあるんじゃないのか?」
「え……」
「何、何?カイン、何かあったの?」
カインは頭を掻きながら、少し離れた所に向かって手招きをした。
それに応えるように、子供を背負った一人の女性が前に進み出た。
「こ、こんばんは。」
「……紹介するよ。つ…妻のアイリスだ。」
「……妻って…それじゃあ……」
カインは照れくさそうに頷く。
「それじゃあ、その子は……!」
「サーシャっていうんだ。
……可愛いだろ?」
カインはそう言って顔を綻ばせた。
「なんでもダルシャから一文字もらって名付けたらしいぞ。」
「アルディ!それは秘密だって言っただろ!」
困ったような顔をして抗議するカインに、アルディは大きな口を開けて笑い飛ばした。
「わぁ、毛がもふもふして気持ち良いね。」
「可愛いわ。
この子…女の子なの?」
セリナとエリオットは、サーシャの傍に寄り添ってはしゃぎまわる。
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