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「フレイザー…大丈夫なの?
あんな約束して……」

「あんな約束って……?」

「だから……ジャネットと結婚式をするってことだよ。」

夕食までの自由な時間、町を見て来ると言って宿を出たフレイザーとエリオットは、町のはずれのベンチに腰を降ろし、静かに会話を交わす。



「あぁ、そのことか。
男にとってはそれほどのことじゃないけど、女の子にとっちゃあ、結婚式って大切なもんなんだろ?
ここを離れる時には俺の記憶は消すつもりだけど……それでも、ジャネットのために式を挙げたいなって思ったんだ。
……いや……俺の思い出のためでもあるかもしれない。」

「……そう。
君が無理してるんじゃないのなら…それで良いんだ……
そっか……それじゃあ、思い出に残る式にしなくちゃね。
あ、セリナ達にも言ってあるから。」

「そうか…ありがとうな。」

フレイザーがそう言ったっきり、二人は特になんでもない山の景色をただ黙ってみつめた。



「……あとどのくらい、こっちにいられるんだろう?」

「どのくらいって…それは君次第だよ。
帰れる手段は確保したんだから、皆を送って行った後だって、しばらくいたいならいたって構わないよ。」

「でも……いればいるほど、きっと別れって辛くなるよな?」

「それはそうかもしれないね……」



二人の間には、再び、長い沈黙が流れた。




「……まぁ、今から考えることもないよ。
今は、ジュリアスを獣人の村に送っていくことだけを考えて……
ねぇ、フレイザー…アルディはジュリアスを受け入れてくれると思う?」

「当たり前じゃないか。
俺はそんなこと疑ったこともない。」

「……君のそういう所は、本当にすごいね。
ボクはやっぱりそこまでは信じきれないよ。」

「その方が良いのかもしれないぞ。
俺達がもうじき帰る世界は、ここよりずっと悪い奴が多い世界なんだから。」

エリオットは、頷きながら苦笑する。



「その通りだね。
ここよりもいろんな面で便利で豊かな世界だけど……確かに悪い奴はすっと多いかもしれないね。
頭を切り替えて戻らなきゃ……」

「エリオット…おまえはここと元の世界、どっち……」



「フレイザーーーーー!」



「あ、セリナだ!」

フレイザーは立ち上がり、セリナに向かって大きく手を振る。



(フレイザー…何を聞こうとしたんだろう?)

そんな疑問を胸に抱きながら、エリオットも同じようにセリナに向かって手を振った。


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