「……君も大変な苦労をしてきたんだな……」

「まぁな……
俺は、こんな見た目だから、人間の世界では絶対に暮らせない。
みつかっただけでも殺されてしまうかもしれない。
だけど、俺は獣人の村でも安心しては暮らせない。
……奴らは俺のことを同族だとは認めてくれなかったからな。
つまり俺は誰からも憎まれる、たった一人の存在だってことだ。
でも……父さんだけはこんな俺を愛してくれた。
おまえは俺の大切な息子だって…しょっちゅう言ってくれた。
だから、生きて来られたんだと思う。
こんな出来損ないでも、愛してくれる人がいるってことが、とても大きな励みになったんだ。
だけど……その父さんが亡くなった。
その日、父さんはとても具合が悪かったんだ。
でも、俺達はどんな時にも休むことは許されない。
俺達は、その日、冷たい雨の中で薪を集めてた。
夕方になって、父さんの姿が見えなくて、あちこち探してたら……
父さんは落ち葉に埋もれるようにして倒れてて……
俺がみつけた時にはすでに事切れてたんだ……

悔しかった……!
父さんが具合の悪いことはわかってたのに…何も出来ない自分が悔しくてたまらなかった…!
それだけじゃない。父さんは死んでからも、皆と同じ墓には入れてもらえなかった。
家の裏に一人寂しく眠ってる…
それから、俺はもうほとほと村の奴らに愛想が尽きたんだ。
こんな所にはいられないって思った。
だから、奴らを困らせてやりたいって気持ちもあって、俺は村の宝である願い石を盗み、村を出た……」

「……酷いよ!
君の村の獣人達は酷過ぎる!
君もきみのお父さんも何も悪いことなんてしてないのに……
ボクだって、きっとそんな村飛び出すと思う!」

「エリオット、軽々しいことを言うな。
獣人が村を出るってことがどんなに大変なことかわかってるのか?」

「もちろんわかってるよ!
軽々しい気持ちで言ったんじゃない。
ただ、ジュリアスの話を聞いてたら、なんだかすごく頭に来て……」

エリオットは、そう言って身体を震わせ唇を噛みしめた。



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