「ジャネット、冷静になるんだ。
フレイザー…」

ダルシャに向かって深く頷いたフレイザーが、ジャネットの傍に寄り添った。



「ジュリアス…君は最初から知っていたのか?」

「まさか……でも、彼女に会った時…においでもしやって思った。」

「そうか…私には獣のにおいがするんだな。」

そう言って、ジャネットは自嘲めいた笑みを浮かべた。



「獣人は、人間の何倍も鼻が効くからな。
なんていうのか…とても懐かしいにおいがした。
だから、もしやって……」

「懐かしいだと!?
気持ちの悪いことを言うな!

「ジャネット…そういう言い方はよせ!」

「フレイザー、聞いただろ?
私は、獣人に犯されてできた子だ。
しかも、獣と双子なんだぞ。
気味が悪いだろう?
私は、一年近くもこんな獣と一緒に同じ腹の中で育ったんだぞ。」

興奮した様子で立ち上がったジャネットの頬は、熱い涙でぐっしょりと濡れていた。
フレイザーは、そんなジャネットのことを優しく抱きしめる。



「……ジャネットもジュリアスのことは知っていたんだな。」

「……炭焼きの爺さんが、亡くなる前に教えてくれた。
でも、そんなこと…信じたくなかった。
獣人は、母さんに酷いことをした、憎んでも憎み切れない存在なのに…私にはそんな獣人の兄弟がいるなんて…一体、私はどこまでツイてないんだろうって、自分の人生を呪ったよ……」

「ジャネット…そうじゃないわ。
あなたには兄弟がいたのよ。
この世に血を分けた肉親がいたのよ。
それって、とても素晴らしいことじゃない。」

「勝手なことを言うな!
こんな獣の兄弟なんて、いない方が良かった。
天涯孤独の方が、どれだけ気持ちが楽なことか…!」

ジャネットはそう言って、ジュリアスを睨み付けた。



「……だろうな。
俺なんていない方が良かった……
それは、俺自身もずっと思ってたことだ。」

「ジュリアス…そんなこと言うなよ。
こいつは、今、混乱してるんだ、だから……」

「いや……彼女のせいじゃない。
俺は、本当にずっとそう思ってたんだ。」

「なにか、そんな風に思う理由でもあるのか?」



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