「……そうだな。
あんたの言う通りだ。
女達に他の選択肢はなかった。
……その通りだ、すまなかった。」

意外な程、素直に謝るジュリアスを、ジャネットは燃えるような瞳で睨みつける。



「それで……ここからは俺自身も信じられないような話なんだけど……
父は、女と一緒にいるうちに……彼女のことを好きになった。」

「えーーーっ!」

エリオットは、自分で発した声に驚き、慌てて両手で口をふさいだ。



「びっくりするだろ?
普通の獣人ならありえない話だ。
獣人の目的はただ子供を産ませることだけだ。
端から愛情だってないんだから、話をすることさえ少ないと思う。
でも、父は違った。
父は母からたくさんの話を聞いたと言っていた。
村のことや家族のこと、人間について…いろんなことをお互いに話し、次第に母も父に好意を持つようになったと言っていた。」

「……素敵な話ね。
獣人だって、人間だって、どちらにも心があるんですもの。
好きになっても不思議はないわ。」

「セリナ、馬鹿なことを言うな!
人間の女は、子を産んだら殺されるんだぞ!」

「あ……」

セリナは、はっとした様子で口元を押さえた。



「それでどうなったっていうんだ?
おまえの父親は泣きながら女を殺したとでもいうのか?」

ジュリアンは俯いたままで小さく首を振る。



「父は……逃がしたんだ。
自分の命をかけて、母と子供を……」

「子供って……それじゃあ、君は人間の世界で暮らしていたのか?」

「違う……母は…双子を産んだんだ……
一人は人間の子、そしてもう一人は獣人の子だ……」

その時、どさっという音が部屋に響いた。



「ジャネット!どうしたの?大丈夫!?」

その場に倒れこんだジャネットをエリオットが助け起こした。
ジャネットの顔は色を失い、白い唇は小さく震えていた。
ジュリアスはその様子を見ながらも、話を続けた。




「獣人の子は一度に一人しか生まれない。
だから、父はものすごく驚いたと言っていた。
俺が生まれた後に、人間の子が生まれたんだから。
人間の子は、とても可愛らしい……女の子だったと言っていた……」

「やめろーーーー!
そんな汚らわしい話、聞きたくない!」

立ち上がったジャネットは、テーブルの上からナイフを掴みとると、ジュリアスの方へ走り出した。
それを見たダルシャが、ジャネットの手からナイフをもぎ取った。


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