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「許してなんてほしくない!
憎みたけりゃ、勝手に憎めば良い!
私はおまえの数百倍は獣人のことを憎んでいるからな!」
「……なぜなんだ?
なぜ、あんたはそこまで獣人を恨むんだ?」
「それは……」
ジャネットは、口ごもり俯いた。
「ジャネット…無理しないで。
別に今話さなくても…」
「そ、それは、獣人が私の母さんを犯したからだ!
母さんを村からさらい、そして……母さんに獣の子供を産ませた!
それがこの私だ!
おまえらは、悪魔以外の何者でもない!!」
血を吐くようなジャネットの告白に、ジュリアスは大きく目を見開いた。
「……ま、まさか……それでは…あんたは、ハイブリッド……」
「それがどうした!
私が純粋な人間じゃないから、見下したか!?」
ジャネットはそう言って、不敵な笑みを浮かべる。
「そ、そんなことはない。」
「我慢することなんてない!
笑いたけりゃ、笑えよ!
あぁ、確かに私は出来損ないの人間さ。」
「……俺には笑えない。」
「同情か?」
「違う…!!」
ジュリアスの発した一際大きな声に、皆が肩を躍らせた。
「……俺に笑えるはずがないじゃないか。
だって、俺だって……俺だってハイブリッドなんだから……!」
ジュリアスの思いがけない告白に、誰も何も言うことが出来なかった。
「……そうだったのか。
だから、君は獣人にしては小柄なんだな。
だが、獣人のハイブリッドは、純潔の獣人と変わらないものだと思っていた。」
「ダルシャ……その通りだ。
だから、俺は出来損ないだって言ってるんだ。
俺の育った村にもハイブリッドが数人いた。
その中には、俺とほぼ同じ時期に生まれた者もいた。
そいつらは皆、純血と少しも変わらない。
俺とは小さな頃からまるで違ってた。」
「君は特別発育が悪かった……と、いうことか?」
「そうだ。
……しかも……それだけじゃない。」
ジュリアスは何か言いにくいことでもあるかのように、ゆっくりと、小さな声で言葉を吐き出した。
「他に何が……?」
ジュリアスは、遠くをみつめるような目をして、静かに語り始めた。
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